かつて異世界で最強の魔王をやってた平社員のおっさん ダンジョンで助けた巨乳女子高生VTuberの護衛をすることになったけど、今の俺はクソザコなんで期待しないでね
第33話 殺人事件を調べにダンジョンへ連れて行かれる
第33話 殺人事件を調べにダンジョンへ連れて行かれる
今日は祝日なので、俺は朝から机に向かって勉強をしていた。
いずれ大学へ通うためだ。働きながら通うことになるが、頑張ろうと思う。
いつまでも低学歴だなんて言わせないぞ。
……まあ言ってくるのは小田原くらいだが。
「少し休むか」
もうそろそろ夕方だ。
休憩したらあと少しだけやって、そしたら晩御飯の用意をするか。
「にんじんとたまねぎとじゃがいもはあったな。肉も買ってあるから肉じゃがにしよう。あともう少し食べたいな」
晩御飯の献立を考えながら、俺はスマホをタップしてニュースを眺めた。
「ダンジョンで殺人事件多発のニュースか」
最近、連日のようにテレビやネットで騒がれている事件だ。
なんでも、複数の上級探索者が狂ったように下級の探索者を殺し回ってるとか。
いやはやなんとも不気味な事件である。
しかし上級探索者が狂ったように殺しにかかってくるだなんて物騒だ。
当分は行かないほうがいいな。襲われたら怖いし。
「けどアカネちゃんが……」
配信でバズるとか言ってダンジョンへ調べに行きたがるかも。
そうなったらちゃんと止めなきゃな。危ないことはダメだよと。
言えばきっとわかってくれるはず。俺のほうが17歳も年上なんだし、大人としてビシッと危険なことはダメだと言ってやらなきゃ。
……と、そのとき訪問者を知らせるベルが鳴る。
「誰だろう?」
インターホンのカメラで確認すると、そこにいたのはアカネだった。
「ア、アカネちゃんっ!?」
「コタロー、ダンジョンへ行くから早く出てきなさい」
「ど、どうして俺の家を?」
「知ってておかしい? わたし社長の娘だよ?」
「あ、まあ、それもそうか」
「納得したなら早く出てきなさい。ダンジョンで多発してる殺人事件を調べて配信をバズらせるんだから」
やっぱりかと、俺は心の中で嘆息する。
しかしビシッと言わなければ。
危険なことに首を突っ込んではダメだと。
「あのねアカネちゃん……」
「早く出て来るのっ!」
「いやあの……」
「早くっ!」
「は、はい……」
有無を言わせない勢いについはいと答えてしまう。
と、とりあえず会ってから話そう。
断じて17歳の女の子に気圧されたわけではない。会って目を見て話したほうがいいと考えたからである。
……会った結果、胸を押し付けられた俺はアカネちゃんの言うままダンジョンに来てしまった。
若くてかわいい女の子に大きいおっぱいを押し付けられたら、なんでも言うことを聞いてしまうこの体質には逆らえない。
いつも通り白い仮面を被った俺は、アカネの隣をおどおどしながら歩いていた。
「ねえアカネちゃん、戻ろうよ」
すでにダンジョンへ来ているので、今さら戻るのは淡い期待であった。
「今のダンジョンは殺人ハンターがいっぱいいるみたいだし、あぶないからしばらく探索はやめといたほうがいいって。ね。配信見てるお父さんも心配するし」
社長が今日の配信を見たらダンジョンへ飛んでくるんじゃないか?
そんな気がして震えた。
「大丈夫だよ。パパにはわたしがアカツキだって言ってないし」
「えっ? で、でもダンジョンでVTuberやってるのは知ってるんだよね?」
「うん。でもそれだけ。配信を見られたらいろいろうるさく言われるでしょ。だから言ってないの」
「あ、ああ、そうだったんだ。なんかいろいろ納得できた」
レイカーズから襲撃を受けた件で、社長からなにか言われたりすると思ったが特になかった。娘を襲撃した小田原もクビにはなってないし、妙だとは思っていたのだ。
「それはともかく、やっぱりあぶないから今日は帰ろうよ」
「コタローが一緒なんだし大丈夫でしょ」
「俺はそんなに強くないって。殺人ハンターとか怖いし」
今も殺人ハンターがこちらを見ていて襲い掛かかる機会を窺っているのではないか? それを考えると身が震えた。
「人間と魔物が命の奪い合いをする場所で、殺人が怖いなんてないでしょ。人を殺すのが人か魔物かってだけなんだしさ」
「いやだって、殺人ハンターはほとんど上級クラスらしいし、そんなのに襲い掛かられたら本当に殺されちゃうかもしれないから……」
童貞のまま死んでしまう。
こんなにもおっぱいが好きなのに、一度も揉まずには死ねない。
「で、でもアカネちゃんだけは守るから安心してね」
「もーなんでそんなに弱気なの? 魔王だったくせに」
「いやあのころよりだいぶ弱くなったし……」
「そうなの? でも十分に強いし大丈夫でしょ。あ、それとこれ」
「うん?」
被っているものと同じ白仮面を渡される。
「これには小型のカメラとマイクが内蔵されてるの。マイクは口の部分で、カメラは額のこの小さな穴ね」
「あ、ほんとだ。小さな穴が空いてる。あれ? こっちにもマイクがついてるよ?」」
よく見たら仮面の端に小さなマイクがつていた。
「これは外部音声の取り込みに使うマイク。これでコタローがわたしから離れた場所に行っても、映像と音声を配信できるからね」
「うん」
いろいろ考えるものだ。
「あと左目の部分が透明の小型モニターになっててね。スマホと繋げれば配信のコメントとか見れるから必要なら使ってみて」
「あ、うん」
新しい白仮面は今までよりやや重量はあるものの、気になるほどではなかった。
「じゃあ時間だし、配信始めるけどOK?]
「お、おっけー」
目立つのが嫌いな俺は配信にいつも緊張する。
仮面が無ければ絶対に無理だと思った。
「じゃあ始めるよ。3……2……1……。はーいアカツキだよ☆みんなこんにちはー☆配信見てくれてありがとー☆今日は話題のダンジョン内で多発してるハンターによる殺人事件を調べるからね☆えっ? 大丈夫かって? 大丈夫だよー☆なんたって今日も白面さんが一緒だからね☆」
カメラを向けられ自然と背筋が伸びる。
「こ、こんにちは白面です。殺人ハンターは怖いのでもう家に帰って晩御飯の用意をしたいです」
「白面さんは弱気だなー☆でもいざとなったら強いから大丈夫だよね☆」
「が、がんばります」
俺の強さをそんなに過信しないでほしい。
アカネの俺に対する信頼は過剰で、もう少し疑ってほしいくらいであった。
「じゃあ今回は調査だからリターン板は使わないで入り口からひとつずつ階層を降りていくよ☆殺人ハンターが出てきたら白面さんが倒してね☆」
「お、おっけー」
戦々恐々としながら俺はアカネとともにダンジョンを進む。
「うおおっ! 殺してやるっ!」
斧を振り上げたハンターが襲い掛かって来る。
「おわっとっ!?」
斧を手で受け止めた俺は、その状態のまま相手を蹴り飛ばす。
「わお☆もう殺人ハンター登場☆でもさすが白面さんだね☆あっという間に倒しちゃったよー☆」
「これはあの人が弱かっただけだよ」
「でもこの人、ゴールド級だよ☆」
倒れている殺人ハンターの手を持ち上げてアカネは言う。
「ダメだよ近づいちゃ。気を失ってるけど、いつ起きるか……うん?」
倒れてるハンターの額に妙な黒いできものを見つける。
「あ、なんか額に黒いできものがあるねー☆なんだろう?」
瞬間、ハンターの口からなにかが飛び出し、アカネに向かったそれを俺は咄嗟に掴んで握り潰す。
「えっ? なに?」
「これは……」
手を開くと、そこにはヒルのような生き物が潰れていた。
「うわっ!? きゃーっ! 虫っ!」
手の中で潰れたそれを目にした俺は大声で叫び、手をぶんぶん振って虫を落とす。それを見たアカネちゃんのドン引きした視線が俺を刺した。
「いや、きゃー虫て……」
「だ、だって虫苦手で……」
家に出たゴキブリに悲鳴を上げて隣から苦情を言われたくらいだ。
「この前は平気でサソリの魔物を倒してたでしょ?」
「あれだけでかければ虫と認識できないというか……」
「まあいいけど。というかさっきの虫ってなんだろう? この人から出てきたみたいけど?」
「人から出てきたってことはたぶん寄生虫かなにかじゃないかなぁ」
「もしかしてこれに寄生されたことが原因で殺人をしてるとか?」
「それはなんとも言えないけど」
もしもさっきの虫みたいなのが原因だとしたら、単なる寄生虫とは思えない。
どこから現れた? 魔物なのか? それとも別のなにかか?
考えても明確な答えはでなかった。
さらに先へ進み、階層のボスを倒して階段を降りる。
そして次の階層を慎重に進む。
「あれ?」
「どうしたの?」
アカネの見る方角に目をやると、そこには大勢が集まっていた。
「なんだろう? あ、あそこになんか蜘蛛の巣みたいのがあるけど……」
大勢の中心には大きな蜘蛛の巣があり、そこには誰かが捕らわれていて……。
「あれはっ!?」
それが誰かわかったとき、俺はすでに動いていた。
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