かつて異世界で最強の魔王をやってた平社員のおっさん ダンジョンで助けた巨乳女子高生VTuberの護衛をすることになったけど、今の俺はクソザコなんで期待しないでね
第243話 大陸魔王セルバスの野心(セルバス視点)
第243話 大陸魔王セルバスの野心(セルバス視点)
世界の北方にある巨大なクリスタルの城。
その城の玉座に巨大で筋肉質なひとりの女が鎮座していた。
北の大陸を支配する大陸魔王セルバス。
その巨大な体躯から、巨人魔王の異名も持つ女だ。
大陸魔王セルバスはイレイアに忠誠を誓っている。
しかしそれと同じくらいの思いで、強い野心も抱えていた。
世界を支配したい。
それは矛盾した感情だ。
自分が世界を支配したい。それはつまり忠誠を誓っているイレイアを倒してしまわなければならないということだから……。
「イレイア様、あたしにあなたを裏切る気持ちなど微塵も無い。この野心。自らに渦巻くこの野心もまた裏切ることができないのです」
イレイアへの忠誠心。自らの野心。
日々それがせめぎ合い、セルバスは苦しみを抱いていた。
「あたしにイレイア様と同等の力があれば……」
共同の支配者になれるかもしれない。
敬愛するイレイア様と2人での支配。それができれば理想だが……。
イレイア様には魔王の力がある。
それと同等の力を手に入れるのは困難だ。
神の行使した力の残滓を集める装置。
イレイア様と並ぶにはあれがもうひとつ必要だった。
「セルバス様」
そこへ配下の男がやってくる。
「なんだ?」
「はい。反逆者の隠れ家ではないかと疑いがかかっていた例の宗教施設ですが、機甲警察の潜入捜査によって疑いが事実であると判明しました」
「ほう」
弐孤が死んだため、奴が管理していた地域も任されるようになった。しかし任されてこんなすぐに反逆者の隠れ家が見つかるとは。弐孤はずいぶん甘い管理をしていたのだなと、鼻で笑う。
「ではすぐに攻め込んでそこにいる全員を皆殺しにしろ」
「は、はい。しかしひとつ気になる情報も……」
「なんだ?」
「その施設には研究所もありまして、どうやらイレイア様の持っておられる力の集合装置を開発しているようなのです」
「な、なんだと?」
力の集合装置。それは今まさにセルバスが欲しているものだ。
「開発状況はどうなっているのだ?」
「滞っていたようなのですが、妙な女が開発に加わってからは進歩があったようです」
「完成しそうなのか?」
「それはなんとも……。しかし可能性はありそうです」
「……」
それを手に入れればイレイア様と同等の力を……。
可能性は高くないが、期待してみてもいいだろう。
「それと、組織の長が直近に代わったようです」
「誰であろうと同じだ。始末する事に変わりはない」
「それが……どうも、その代わった長が例の白面のようなのです」
「なに? あの反逆者か?」
弐孤を容易く葬った反逆者の男。
奴が反逆者の組織と接触して、そこへ所属することは不思議ではなかった。
「奴は大陸魔王の弐孤様を倒したほどの男です。奴が例の組織に所属したとなると、軍隊や機甲警察のみでの殲滅は厳しいかと……」
「ふむ……」
自分と弐孤の実力にそれほどの違いは無い。
白面が真っ向から弐孤と戦って勝利したのならば、自分が勝つことも難しい。しかし……。
「反逆者の施設へ攻め込む前に、力の集合装置の開発状況を詳しく調べて報告しろ」
力の集合装置。もしもあれが完全な形で完成するのならば、それを奪って使う。そうすれば白面を容易く倒せるうえ、イレイア様と同等の力を手に入れられる。
「はっ。この件はイレイア様に報告いたしますか?」
「いや、報告はあたしのほうでしておく。お前はもう下がっていい」
「かしこまりました」
一礼をしてはいかが部屋を出て行く。
イレイア様に知られれば、恐らく力の集合装置を破壊しろと命令をするはずだ。そうなれば逆らうことはできず、白面を倒すこともイレイア様と同等の力を手に入れるという目的も達することができなくなってしまう。
「イレイア様、あたしにあなたへ反逆する意志などありません。ただあなたと同じ場所に立ち、同じ景色を見たいだけなのです。どうかお許しを」
玉座から立ち上がったセルバスは魔王城のある方角へ向かってそう呟く。
イレイア様への忠誠心は変わらない。
むしろ自分が同等の位置につくことで世界の支配を今よりも盤石にできる。
イレイア様のため。そして自分の野心を満たすため。
その願いがようやく叶いそうだと、セルバスは安堵の思いであった。
――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
身体はでかいが、胸は小さい巨人の魔王ですね。身体が小さくて胸が大きいアカネちゃんとは真逆の体格なようです。
☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
次回は完成した装置を奪うものが……。
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