第3話 巨乳の若い女の子を助ける
「お、おいさっきの皇隆哉じゃね?」
「あの女の子は一緒じゃなかったけど……」
見捨てられたか。
状況からしてそれしか考えられなかった。
「ど、どうする?」
「どうするって、シルバー級の1位が逃げ出すレベルだぞ。俺たちが助けに行ったって犬死だろ」
それはそうだ。
こんな浅い階層をうろついているハンターなんてストーン級かよくてブロンズ級。
シルバー級が逃げ出すような魔物と戦ったって、すぐに殺されるだけだ。
それは俺も同じ。
俺は正義の味方じゃない。命を懸けて人を助けるなんてごめんだ。
しかし。
俺はダンジョンの奥を見据えると、そちらへ向かって指を差す。
「そのサソリがいたのはこの道をまっすぐ行った先ですか?」
「えっ? あ、ああ、そうだけど」
「わかりました」
俺はその方向へ向かって駆け出す。
「お、おいあんたっ! 戻れっ! 死ぬ気かっ!」
背後から聞こえる声を無視して俺は全力で駆ける。
人助けなどに興味は無いし、強い魔物は怖い。
しかしあの女の子はおっぱいが大きかった。
おっぱいの大きい若い女の子が死ぬのはダメだ。
なぜなら俺は、おっぱいの大きい若い女の子が大好きだからだ。
自分が好きなものを守るために動く。
この行動はただそのためだけである。
俺の全速力は意外に速く、あっという間に目的の場所へとたどり着く。
「力の9割以上を失っているから走るのはもっと遅いと思ってたけど……いや、今はそんなことより」
紫色の巨大なサソリ。
大きさは大型トラックほどはあるだろうか? それが俺に尻を向けていた。
「た……助けて」
さっきの女の子、アカツキが壁へ追い詰められて震えている。
さてどうするか?
このまま見ていれば女の子はサソリに殺されてしまう。
そう思った俺は足元に落ちている石を拾い上げ、
「えいっ!」
サソリへ向かって投げる。
尻尾へぶつかった石に気付いたサソリがこちらを向く。
「さて……」
ストーン級の俺がこいつを倒すのは無理だ。
生きるには逃げるしかない。
まずは女の子を逃がさなければ。
俺は手振りで女の子へ逃げるよう指示する。
しかし女の子は震えながら自分の足を指差す。
……どうやら怪我をしたか、もしくは腰が抜けて立てないらしい。
こうなったらあの子を担いで逃げるしかないが、
ズササっ!
ものすごい速さで巨大サソリがこちらへ迫る。
ま、まずいっ! 殺されるっ!
無我夢中で俺はサソリの振り上げた巨大なハサミから逃げ出す。
「ん? あれ?」
サソリのハサミは俺からずいぶんと離れた地面を打つ。
「俺、いつのまにこんな遠くへ逃げれたんだ?」
異世界にいたころならともかく、今の俺にこんな力が?
いや、9割以上も力を失ったんだぞ? こんなに動けるわけが……。
ズサササっ!
ふたたびサソリが俺へと迫る。
しかしもしかしたら。
振り下ろされるサソリの巨大ハサミ。
今度はそれを避けることなく、動かずただ右手を上げた。
ドンっ!
ハサミが俺の右手によって止められる。
「や、やっぱりか」
こちらへ戻って来てから走ったり、大きく力を使うことがなかったから気付かなかった。
向こうへ9割以上の力を置いて来たのは間違いない。
だが、残った1割未満の力は俺が想定するよりも強力だったのだ。
「これなら」
俺は止めているサソリのハサミをそのまま掴み、壁へと投げ飛ばす。
壁へと打ち付けられたサソリが地面へドサリと落ちる。
「本来の力があれば、触れただけであのサソリは消滅していただろうな」
サソリはまだ生きている。
駆け出した俺は上空へ跳び上がり、
「これで終わりだ」
両手で天井を押し、その勢いを利用してサソリの背を両足で打つ。
「ギャギャアアアアアアっ!!!」
俺の蹴りで身体に大穴を開けられた巨大サソリが気味の悪い叫びを上げる。
そしてうつ伏せに身体を崩すと、そのまま動かなくなった。
「死んだか」
息絶えた巨大なサソリの身体は少しずつ溶けていき、やがて液状化をする。
異形種は頑丈で強い魔物だが、倒すとこうして液状化してしまい素材は穫れない。ゆえにダンジョンではただ厄介なだけの存在であった。
なぜ液状と化してしまうのかはわからない。
通常の魔物とはなにかが根本的に違うのかもしれないが、理由はまだ判明していないとのことだ。
しかし異形種か。
さっきのサソリ、俺がいた異世界の魔物によく似ているような気がする。まさか向こうの世界とこのダンジョンはなにか関係があるのか?
少し考えてみたが答えは出ず、気のせいだと思うことにした。
「さて……」
俺は女の子のほうへ目をやる。
さっきまでと同じく、壁際に座ってこちらを見ていた。
助けてしまったが、俺は陰キャなので女の子と話すのは苦手だ。
もう大丈夫だろうし、このまま去るのがいいか。
そう考えた俺はもと来た道へ向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!」
ふらりと立ち上がった女の子がそう叫ぶ。
「えっ?」
なんだろう?
お礼でも言ってくれるのかな?
そんなことを考えているうちに女の子がこちらへやってくる。
そして女の子は俺を指差し、
「あなた、わたしのVTuner活動を手伝いなさいっ!」
言った言葉は想像もしていないことだった。
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