第18話 スキル『急速進化』の力
「誰だ?」
「これは失礼しました。私は藤河原英太と申します」
こいつが藤河原英太。
レイカーズのリーダーか。
「ご存じかもしれませんが、レイカーズのチームリーダーをしております。私が国家ハンターとして働いていることもご存じとか」
昼間に俺たちが国家ハンターの本部へ行ったことを知っているのか。
あの本部長がこいつに話したのか、それともあの場にいたのか手下がこいつに伝えたのか、それは今どうでもいいことだった。
「皇はどうなったんだ?」
「知りたいですか?」
「察しはつく。殺したのか?」
「とんでもない。そんな野蛮なことはしませんよ。おいしくいただきました」
「そうかおいしく……えっ? おいしくいただいた?」
まさか食べたのか?
いや、殺してないならそんなわけないだろうが……。
「君もなかなかおいしそうな身体をしていますね」
藤河原の視線に薄ら寒いものを感じる。
「ね、ねえもしかしてこいつ」
「えっ? なに?」
「男が好きなんじゃ……」
それを聞いて俺はゾッとする。
皇をおいしくいただいたとはつまりそういう……。
「ふふ、お仕置きも兼ねて激しくいただいたので、隆哉さんは壊れてしまいましたが……さてあなたはどうでしょうね?」
絶対に負けれない戦いだ。
負けたらいろいろ失ってしまうだろう。
「先ほどのスキル、私にも使って構いませんよ」
「なに?」
こう言うということは防ぐ手段があるってことか。
「さあどうぞ」
なにかしてくるような雰囲気でもない。ならば、
右手を上に向けてふたたび地面から石を飛び出させる。
襲い掛かる無数の石がぶつかり、最後に顔面へ石を受けた藤河原は倒れた。
防げていない。
一体、なにがしたかったのか?
「……な、なるほど。これは他の方たちでは受け切れませんね」
ヨロリと藤河原は立ち上がる。
「しかし私はこの通り頑丈でしてね。これくらいでは効きませんよ」
「ならもう一度だ」
さっきと同じく石が藤河原を襲い、最後に顔面へぶつかる。
しかし藤河原は倒れない。平気な様子でそこに立っていた。
「なに?」
どういうことだ?
俺は藤河原の様子を見る。
なにも変わっていない。それなのに同じ攻撃を受けて傷が増えることも無く平然と立っていられたのはなぜなのか謎だった。
「どうして私が2回目の攻撃には耐えられたのか? 傷が増えないのか? 不思議でしょうね。ならば答えを教えてあげましょう。……おごっ」
「!?」
藤河原が口から右手へなにかを吐き出す。
それはゴルフボールほどの青い宝石のようなものだった。
「これは進化の玉石というもので、レベリングドラゴンの体内から獲れる貴重なアイテムです。レベリングドラゴンは攻撃を受けると受けた攻撃に対応して即時に進化をします。その特性を可能にしているのがこの進化の玉石というわけです」
「進化の玉石……」
「これを飲み込んで胃に収めることでスキル『急速進化』を使用できるようになります。あなたのスキルに耐えられたのもそれが理由です。つまり私の肉体は進化をしてあなたの攻撃に対応したのですよ」
「なるほど」
俺の魔法に耐えた理由に合点がいった。
「あなたがどんな攻撃をしてきても無駄です。あなたが私に攻撃をするほど、私は強く進化します。勝つことは不可能でしょう」
玉石を飲み込み、藤河原はニヤリと笑う。
「さて、それはどうかな?」
俺は拳を固めて藤河原へ近づく。
「殴るんですか? いいですよ。その攻撃にも……」
言い終わる前に、俺は藤河原の顔面をぶん殴る。
殴り飛ばされた藤河原は吹っ飛び、激しく地面を転がった。
「く……くははははっ! 良いパンチです。しかしもう効きませんよ」
「そうか」
立ち上がった藤河原の前で拳を構える。
「殴っても効きませんよ。あなたの殴打はもう対応……ごはぁっ!」
藤河原はふたたび吹っ飛んで激しく地面を転がる。
「う……あ……い、痛い。な、なぜっ? 対応したはず……」
起き上がった藤河原を俺は見下ろす。
「魔物は老いないし寿命で死ぬこともない。つまりレベリングドラゴンとやらは誰かに倒された。ということは、どんな攻撃にも耐えて進化をできるわけじゃない。許容量を超えた攻撃には耐えられないはずだ」
「そ、それは……」
「さあもう一発だ。いや、お前はもっと痛めつけられたほうがいいな」
「ちょ……待っ……」
待たずにぶん殴る。
起き上がってこないので胸倉を掴んでぶん殴る。
這いつくばって逃げようとするので捕まえてぶん殴る。
なにか言っているが無視してぶん殴る。
なにも言わなくなったが関係ない。ぶん殴る。
「うん?」
10発くらい殴ったか。ボコボコに顔を腫らした藤河原の身体に変化が起こる。
大きかった身体が縮んでいき、やがて小柄なおっさんになった。
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