第91話 無数に落ちている欠片
配信を開始して俺たちはダンジョンを進む。
マンダ:異形種増加の原因を突き止めるって、さすがに難しいだろ
ぬまっきー:異形種の出現理由すらいまだに不明だしな
めたどん:異形種の出現理由がわかったら世界レベルの発見だよ
コメ欄にある通り、異形種は出現理由すらわかっていない。
それなのに増加理由を突き止めるのは至難と思えた。
「やっぱり異形種は多いねー☆」
「うん」
入り口からここまで上層の中ほどまで歩いて来たが、確かに異常なほど異形種と遭遇する。しかし強さはそれほどでもなく、造作も無く倒せている。
イグナス:僕は弱い異形種が増えていることが、増加理由を解明するヒントになるんじゃないかと思ってるよ
ランラン:それは気になってた。なんで弱いのが増えてんだろ?
確かに弱い異形種が増えているのはなんでだろうと思う。
考えても理由はさっぱりだが。
「うん?」
足元になにかが落ちているのを見つけて歩くのを止める。
魔物にやられた探索者の武器が落ちていることは珍しくない。防具などだったら身に着けたまま食べられて魔物の腹で消化されてしまうが、武器はよく落ちている。しかし足元に落ちているこれは……。
俺は屈んでそれをじっと見つめた。
「なにかの欠片か?」
砕けた輪っかの一部みたいな形だが……。
「もしかしてバラバラになったスキルサークレットの欠片じゃない?」
「えっ? スキルサークレット?」
「うん。大きさとか色とかそんなだったような気がするし」
言われてみればそうかもしれない。
「魔物に壊されて捨てて行ったのかな?」
「そうじゃない?」
まあそういうこともあるかと、俺はそれほど気にせずその欠片を捨てる。
そのまま先へ進み、やがて中層へと入った。
「うーん……」
ここまで歩いて来て、俺はひとつ違和感に気付く。
砕けた防具がやたら多く落ちている。
ダンジョンの階層を下がるほど、それは増えていった。
さっきのスキルサークレットみたいに魔物の攻撃で壊されたものの欠片と考えればそれまでだが、あまりに多いような気がして不気味だった。
「これも……スキルサークレットの欠片か」
スキルサークレットの欠片もよく落ちている。
脆い作りなんだろうか?
触れてみた感じでは丈夫にできていそうだし、ジョー松の商品は丈夫さが売りだ。防御メインの装備品ではないとはいえ、脆いなどあり得ないと思う。
そらー:それもスキルサークレットの欠片? よく落ちてんな
おやつ:スキルサークレットの頑丈さを調べる動画をみたことあるけど、傷すらついてなかったぞ
ナイトマン:こんなに砕けやすいはずないんだけどな
しかし砕けたスキルサークレットが実際あちこちに落ちている。
加えて砕けた防具も多く落ちていた。
なにか変だ?
アカネちゃんの隣で俺が首を傾げていると、
「う、うわーっ! た、たた助けてくれーっ!」
「うん?」
どこからか助けを呼ぶ声が聞こえた。
「どうする白面さん? 行ってみる?」
「聞こえたんじゃしょうがないね」
動画の配信もしているんだ。
見捨ててはイメージが悪いだろう。
俺はアカネちゃんと一緒に声の聞こえたほうへ歩く。
しばらくして見えてきたのは……。
「あれかっ」
巨大なオーガがこちらへ走って来ていた。
恐らく異形種だろう。
「た、助けてーっ!」
「うん? あいつは……」
ダンジョンの出入り口でアカネちゃんを突き飛ばした奴の仲間だ。しかし他の連中はおらず、そいつはひとりだけでこちらへ逃げて来ていた。
「見捨てられたか?」
まあいいかと、俺は右手で火の魔法を放とうとする。
「……ん?」
しかし俺はあることに気付き、攻撃を止めてオーガの全身に注目した。
「あのオーガ……身体に入れ墨がある」
全身ではないが、オーガの肌には入れ墨が見える。
そして額には……。
「あの入れ墨……確か」
「ぐぅおおおおおおおっ!!!」
目前まで迫り、俺は火の魔法を放ってオーガの頭を焼失させる。
頭を失ったオーガはフラリと身体を揺らし、そして跡形も無く消え去った。
「はあ……はあ……」
逃げて来た男は両手を地面について、荒く呼吸を繰り返す。
「あ……ありが……ありがとう……はあ……はあ」
「礼はいいよ。それよりも仲間はどうしたんだ?」
「み、みんなやられた……」
「入れ墨のあいつもか?」
「い、いや、いや……違う。あいつが……あいつがやったんだ。俺たちを……」
タイガー:どういうこと?
おやつ:なに言ってんだこいつ?
ぬまっきー:仲間割れ?
……俺は嫌な予感がしていた。
ものすごく……嫌なことをこの男から聞いてしまう予感が。
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