かつて異世界で最強の魔王をやってた平社員のおっさん ダンジョンで助けた巨乳女子高生VTuberの護衛をすることになったけど、今の俺はクソザコなんで期待しないでね
第110話 魔人との出会い(小田原智視点)
第110話 魔人との出会い(小田原智視点)
――小田原智はダンジョンで魔物を狩っていた。
仕事には行っていない。
ただひたすらに魔物を狩り続ける毎日だ。
「くそっ!」
魔物を倒し、そして自分の身体に変化が無いとわかり智は苛立ちの声を上げる。
スキルサークレットを装備し、家にも帰らずダンジョンに潜り続けてもう2週間ほど経ったか。今だにスキル発現をせずに智は苛立っていた。
スキル発現をして仮面野郎をぶっ殺す。
それを目指してダンジョンへ潜り始めたが、一向に身体の変化を感じない。
やはり上層の魔物では魔粒子の放出が少ないのだと思う。
スキルサークレットの使用者が減ったせいで異形種も少なく、効率的に魔粒子を得られないのも理由であった。
とはいえ自分には中層深層で魔物を狩れる実力が無い。
時間がかかっても上層でスキル発現を目指すしかないのだ。
「末松の野郎、余計なことしやがってっ!」
ジョー松社長の息子だったのかなんなのか知らないが、あいつのせいでスキルサークレットの使用者が減って異形種も大幅に減った。
あんな奴に邪魔をされるのは不愉快極まりない。
ダンジョンで見かけたら殺してやる。
しかし今はそれよりもスキル発現だ。どんなに時間がかかっても、あの仮面野郎を殺すにはスキル発現が必要だった。
異形種になってしまう可能性もある。だが奴よりも強くなるにはもうこれに賭けるしかない。
なんとしてもスキル発現をして仮面野郎をぶっ殺す。
智の頭にはもうそれしかなかった。
「ぐあっ!?」
意気込んで階層を進み過ぎたか。魔物が強い。
オーク型の魔物に攻撃された智は壁際へと追い込まれる。
「こ、こんなところで死んでたまるかよ。俺は……」
魔物が智へ襲い掛かった。
そのとき、
「ぐぎゃ……」
飛来したなにかが魔物の頭を貫く。
それも見た智は、過ぎ去った危機に安堵しつつ周囲を見渡す。
「な、なんだ? 誰かいるのか?」
自分を助けた誰かがいる。
それを智は探した。
「ここだよ」
「えっ?」
声のした方向へ目をやると、岩の上に座る女の姿が見えた。
「お前は……なんだ?」
紫色の肌。額と右肩に鋭い角。
人間のようではあるが、異様な外見であった。
「あたしか? あたしは
「聞いてるのは名前じゃねーよ。お前、人間か?」
「昔はね。人間だったよ。今は魔人さ」
「魔人? なんだそいつは?」
女はクスクス笑いつつ岩から立ち上がり、智のほうへ歩いてくる。
「いずれ全世界を支配する新しい種族さ」
「ふざけんなっ!」
からかわれていると思った智は、倉部夢音と名乗った女を怒鳴りつける。
「ふざけてないよ。マジのマジ。あたしたち魔人は近いうちに世界を支配することになるから」
表情を真剣にして女は言う。
真顔で言われたからといって、そうかとあっさり信じるような馬鹿じゃない。しかし目の前にいる女が普通の人間でないのは明らかだ。
「たちってことは、お前みたいのが他にもいるのか?」
「ああ。まだそんなに多くは無いけど、これから増えていくよ」
「増える? 分裂でもすんのか?」
「あははっ、それなら簡単でいいけどねぇ。魔人を増やすのはもう少し面倒くさいんだよ。それなりに才能も必要だしね」
「なんだその才能って?」
「ふふふ……」
卑しく笑いながら、女は自分の右胸を指差す。
「邪悪な心」
「どういうことだ?」
「そのままの意味だよ。邪悪な心を力に変えて魔人は誕生する。心が邪悪なほど、強い魔人になれるのさ」
「強い……」
それがどれほどの強さなのか?
少なくとも、魔人を自称するこの女は自分より強いようだが。
「あんた、小田原智だろ?」
「俺を知ってるのか?」
「知ってるよ。レイカーズは有名だからね。あんたはたぶんチームメンバーで一番有名じゃないかな?」
「ちっ」
嫌なことを思い出させてくれる。
レイカーズでやってきたことはまったく後悔していない。ストレス解消には最高のチームだったし、楽しい思い出はたくさんある。
嫌なことは最後だけ。自分の人生をむちゃくちゃにしてくれた仮面野郎さえいなければ、きっと今でも楽しい思いをしていたんだろうと、智は怒りで奥歯をギリリと噛んだ。
「その顔、怒ってるね。レイカーズを潰したあの男が憎いか? あんたを凶悪な犯罪者として晒した社会が憎いか?」
「憎いね。俺を嘲った奴ら、俺を晒して正義面してる奴ら、みんなみんな憎い。けど、俺に苦渋を舐めさせやがった仮面のクソ野郎は憎いじゃ済まねえ。1万回ぶっ殺したって気は晴れねーよ」
「素晴らしいね」
女は嬉しそうに拍手をする。
「あれだけのことをやっておいて反省の心は微塵も無い。あんたは見込み通りの男だ。素晴らしいよ」
「ああ?」
「あんたのような邪悪の極みをあたしは探していたんだ」
「誰が邪悪の極みだ。俺は好きに生きてるだけで、邪悪なんかじゃねぇ」
「ますます素晴らしい。真の邪悪ほど、自分を悪とは思っていないものだからね。あんた才能あるよ。魔人のね」
「だからなんだ? 俺を魔人にするってのか?」
「そうだよ。あんたは間違いなく最凶最悪の魔人になれる。あたしが保証するよ」
「最凶最悪の魔人……」
そうなればあの仮面野郎をぶっ殺せるのか? だったら……。
「社会が憎いんだろ? あんたの人生を潰したあの仮面男が憎いんだろ? だったら魔人になりなよ。あんたは絶対に強い魔人になれるからさ」
「……本当だろうな?」
「ああ。魔物を狩ってスキル発現を目指したって、どうせあんたじゃ異形種だ。それよりも魔人になったほうがいい。スキル発現よりも、あんたなら魔人のほうがずっと強くなれる。あたしと一緒に来な。ある人物に会わせてやる」
「ある人物? 誰だそいつは?」
「あたしたちの親みたいなものさ。その人があたしたちを魔人へ変えてくれる」
「ふん。ならすぐに会わせろ。強くなってあのクソ仮面野郎をぶっ殺せるなら、魔人にでもなんでもなってやる」
「いいね。来な。あたしもあんたがどんな魔人になるか楽しみだ」
背中を向けて歩いて行く不気味な女、夢音に智はついて行く。
女の話からして、魔人というのは極悪ななにかなのだろう。
しかしなんだっていい。強くなって仮面野郎を苦しめて殺せるならばは悪魔にでも魂を売ってもいいと、智の胸にはそれほどの憎悪が渦巻いていた。
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