第10話 皇隆哉のスキル『疾風』
皇はアカネから奪ったカメラとマイクを握り潰す。
「よお、昨日ぶりだなVTuberのお嬢ちゃん」
「あ、わたしを置いて逃げたクソダサハンター皇隆哉じゃん」
「だ、誰がクソダサハンターだっ! てめえが配信なんかしやがったせいで俺の評判はがた落ちだっ! 責任を取ってもらうぜっ!」
「護衛のくせに逃げたあんたが悪いんじゃん。おかげでわたし死にかけたんだけど?」
「うるせえっ! 俺と一緒に来てもらうぜ」
こちらへ向かって足を踏み出す皇。
俺は咄嗟にアカネの前に立つ。
「仮面のてめえが誰かは知らねぇけど、その女を助けてもらって感謝してるぜ。その女が死んじまってたら落とし前がつけられねぇとこだったからな」
「落とし前?」
「俺が所属してるチーム、レイカーズは護衛の依頼を引き受けているんだ」
雰囲気からして、ふたたび護衛をして汚名を返上したいということではなさそうだ。ならば奴の言う落とし前とは……?
「護衛は若い女からの依頼限定で。この理由はわかるか?」
「まさか」
「そうさ。護衛するって女を騙したり捕まえて犯っちまうのがレイカーズのやってることだ。ダンジョンってのはいいよな。ここで人が死んでも、みんな魔物に殺されたって思う。犯り飽きた女とかさ、捨てるには都合がいいぜ」
「お前……っ」
俺は正義の味方じゃないが、一般常識は備えている。
こいつのしていることは最低だ。
皇がアカネを連れて行ってなにをする気か知った俺の中で、ふつふつと怒りが沸き上がってきた。
「下衆野郎め」
「賢いって言えよ。まあ考えたの俺じゃねーけど」
そう言って皇は卑しく笑う。
昔からクズだとは思っていたが、ここまでろくでもない奴だったとは。
同級生として恥ずかしい限りだ。
「お前、なかなか強いじゃん。レイカーズに入れてやってもいいぜ」
「ふざけるな」
「だったら失せろ。俺はそこの女に用があるんだ。お前に用は無い」
「彼女には触れさせない」
「女を守るナイトのつもりか? 格好良いじゃんよ。へっへっへ」
「……」
「まさか俺に勝てると思ってるのか? 昨日の異形種はよう、硬すぎて俺の攻撃が通らなかった。けれど俺の持ち味は攻撃力じゃねえ。素早さだ」
皇は自分の鎧を親指で指す。
黒と濃い紫の邪悪な色合いの鎧だ。
その鎧が皇の全身を覆っていた。
「これはベルゼビュートの鎧だ。レア素材ベルゼビュートの心臓で作られたスキル付きの鎧だぜ」
「スキル……」
「スキルは『疾風』。連続では使えねーけど、一瞬だけ目にも止まらない素早さで動ける。俺がこのスキルを使えば、その瞬間にてめえの首は落ちるぜ」
なるほど。
そのスキルを使ってアカネちゃんからカメラとマイクを奪ったのか。
「昨日の異形種は硬くて斬れなかったがよぉ、てめえの首なら斬れるぜ。俺はやさしいからてめえに警告してるんだ。死にたくなければ失せろってな」
「……」
確かに奴のスキル『疾風』は素早い。
相手が普通の人間ならば、瞬時に首を斬り落とされるだろう。
「コ……白面さん」
振り返ると、不安そうなアカネの表情が見える。
アカネは笑っていたほうがかわいい。
おっぱいの大きい若くてかわいい女の子は、しあわせに笑っていなくちゃダメなんだ。不安な顔なんて、させちゃいけない。
「確かに死にたくはないな」
「へっ、だったら……」
「お前みたいな下衆なんかに殺されたりはしない」
「……どうやら死にてーようだな」
その一言を言ったのち、皇の姿が消える。
「し……」
左からの斬撃。
瞬間、俺は皇の右手首を左手で掴んだ。
「な……にぃっ!?」
俺の目前で皇は目を見開く。
動きはすべて見えていた。
アカネからカメラとマイクを奪ったときからすべて。
「な、なんでっ!? 俺の動きを捉えられるはずがねぇっ!」
「皇隆哉」
俺は右拳を固める。
「お前は本当に下衆野郎だ。真性のクズだ。子供のころなら更生できたかもしれないけど、その歳じゃあもう死ぬまで下衆は治らないだろう」
掴んでいる皇の手を離す。
「て、てめえっ!」
怒り顔で斬りかかって来る皇。
その胴体に、
「むんっ!」
「がぼぁっ!?」
拳を抉り込む。
殴り飛ばされた皇は遠くの壁へと叩きつけられ、纏っていた鎧はバラバラに砕け散った。
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