かつて異世界で最強の魔王をやってた平社員のおっさん ダンジョンで助けた巨乳女子高生VTuberの護衛をすることになったけど、今の俺はクソザコなんで期待しないでね
第42話 コラボ配信当日(伊馬アカネ視点)
第42話 コラボ配信当日(伊馬アカネ視点)
アカネはずっと不愉快な気分が消えなかった。
ダンジョンで小太郎が漆黒の女王を助けたあの日からだ。あれからずっとイライラしていて気持ちが晴れない。
「アカネさん、どうかしましたか?」
コラボ当日、アカネは加賀木とダンジョンへ来ていた。
機嫌の悪い様子が態度に出ていたのか、加賀木が声をかけてくる。
「いえ別に。なにもありませんけど」
「そうですか」
爽やかな笑顔を見せる加賀木。
この男の噂は知っている。大層に女癖が悪いらしい。ビデオ通話で話したとき、こっちの顔を見てから2人でダンジョン探索配信をやりたいと言ってきたときから、噂は本当だろうと確信できた。だからコラボは断ったのだが、
この人、しつこかったんだよね。
何度もしつこく頼んできたのだ。大物VTuberに頭を下げられてそれを断れば変な噂を流されてアカツキの人気に悪影響が出るかもしれない。
どうしようか迷って小太郎へ相談の電話をした。2人だけでダンジョンへ行くなんてダメだと小太郎が言うなら断ろうと思ってたけど、
2人だけで行って来なよだって。
まあ大物VTuberとのコラボは悪いことじゃない。アカツキの人気を考えるならば、コラボに賛成するのは当然とは思う。
しかし納得いかない。不愉快だ。
イライラする自分にもイライラする。
自分が他の男と2人で行動することに微塵も不快な様子を見せなかった小太郎に、アカネはイライラしてしかたがなかった。
「やあ、本当にコラボを受けてくれてありがとう。やっぱりビデオ通話で話すより、1回会って頼んだのがよかったのかな?」
「まあ……そうですね」
それを聞いて女王に胸を押し付けられながらデレデレだらしない顔をする小太郎を思い出す。
あんのスケベ中年っ!
思い出したらますます腹が立ってきた。
胸がでかければ誰でもいいんだあんな奴。
しかし小太郎への当てつけでコラボをOKしてしまった。
何事も無ければと、アカネは少し不安に思っていた。
「では配信を始めましょうか?」
「あ、はい」
アカネは気持ちを切り替えアカツキとなる。
「おっすー。今日は予告通り今話題のVTuberのアカツキちゃんに来てもらったぜ。じゃあアカツキちゃんどうぞー」
「桜ノーマンさんのファンのみなさんこんばんわー☆アカツキでーす☆あ、あたしのファンも来てくれてるみたいだねー☆こんばんわー☆」
そうしてコラボ配信は始まり、アカネは加賀木とダンジョンを進んだ。
配信を考えて苦戦を演出しながら魔物を倒す。
わーわーと会話をしながらのコラボ配信は同接もかなりいいが、
マンダ:やっぱり白面さんいないとテンポ悪いな
ランラン:演出だよ。シルバー級ならこんな浅い層の魔物なんかもっとサクサク 倒せるはずだし
ナイトマン:サクサクったって白面さんほどじゃないだろ? 俺はあの無敵っぷ りとそれに驚くかわいいアカツキちゃんが見たいんだよ
ぬまっきー:桜ノーマンじゃ見てて不安だわ。異形種が現れたら皇みたいに逃げ るんじゃないのか?
タイガー:女癖悪いって噂だしな。俺はそういう意味で不安
そらー:アカツキちゃん未成年っぽいけど手出すんか?
おやつ:ヤリチンなら出すでしょ
アカネのファンはこの配信に否定的なコメントが多い。
それに対して桜ノーマンのファンが噛みついてコメント欄は少し荒れていた。
アカネも普段、小太郎の戦いを間近で見ているせいか、加賀木の戦いは演出ということを考慮しても拙く思える。
別に加賀木が弱いのではない。小太郎が強すぎるのだ。
強い彼に興味を持った。
強ければ護衛は誰でもよかった。
胸さえでかければ誰でもいいなんて、コタローに言えないよね。
自分だってコタローの強さしか見ていなかったことに気付く。
強いから小太郎に護衛を頼んだ。けど今は……。
やがてボス部屋へと到達し、配信を盛り上げながらボスのビッグウッドを倒す。
「ボスを倒しましたー。まあ浅い階層のボスなんでラクショーですね」
「えー☆桜ノーマンさん結構、苦戦してませんでしたかー? あたし撤退の準備してたんですけどー☆」
「マジすか? ぜんぜんよゆーっすよ。これでもシルバー級ですからー」
「あはは☆冗談です☆」
「ひどいなー。おっと、それじゃあボスも倒したことですし、今回のコラボ配信はこれで終了しましょうか」
「はい☆えーっと、桜ノーマンさんコラボしていただいてありがとでしたー☆」
「はーいこちらこそー。ではではみなさんまた次回。チャンネル登録と高評価よろしくでーす。それじゃあおやすみなさーい」
「おやすみー☆」
……と、そこで配信は終了。アカネは一息つく。
「おつかれアカネさん。どうだった?」
「ええまあ、楽しかったです」
そう答えるも、頭の中では小太郎のことばかり考えていて、コラボ配信が楽しいとかつまらないとかを考える余裕はなく、ボロを出さないよう必死だった。
帰ったらコタローに電話をして謝ろう。
小太郎はアカツキの人気を考えてコラボに賛成してくれたのだ。それなのにあんな態度を取ってしまったのは悪かった。
女王に抱きつかれてデレっとしてたのはやっぱりムカつくけど、巨乳に弱いスケベ中年なのでああなってしまうのはしかたないととりあえずは許そう。
そう心の中で決めると、アカネはすぐに帰って小太郎と話したくなる。
「じゃあもう遅いので帰りますね。機会があればまたコラボお願いします」
足早にリターン板のほうへ歩こうとするアカネ。
その肩を加賀木が掴む。
「まあ待ってください。もう少し一緒に話でもしましょうよ」
「いえ、遅くなると親が心配しますので」
「いいだろ」
手首を掴まれ、壁へと押し付けられる。
「ちょ、なにするんですかっ!」
「なにって、子供じゃないんだしわかるだろ?」
先ほどまでとは目の色が違う。
綺麗な顔を歪めて好色そうな表情でアカネを見下ろしていた。
「こんな……だ、誰か来ますよっ?」
「ボスが現れるまでは誰も入って来ないさ」
確かにボスのいないボス部屋に誰かが入って来る可能性は低い。
アカネは危機を感じた。
「君って本当にかわいいな。俺が出会った女の子で一番だよ。背が低すぎるのがちょっと気になるけど」
「くっ……離してよっ!」
「なにが不満なんだ? 俺みたいな超絶イケメンに迫られてるんだぜ? 女だったら股を濡らして受け入れるもんだろ?」
「顔が良いってだけで女がみんな惚れると思わないでくれる?」
「普通の女は惚れるんだよ。なんだ? もしかしてお前、あの白面って奴とできてるのか?」
「そ、そんなこと……」
「じゃあいいだろ」
加賀木の手が胸へと伸びてくる。
い、嫌だっ! コタローっ!
アカネが悲鳴を上げそうになった。そのとき、
「うわっ!? なんだっ!?」
「えっ?」
アカネの足元から小さな光の玉が飛び出し、胸へ触れそうになった加賀木の手を弾いた。
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