第108話 合流
牢を脱した俺はティアとミレーヌと共に女王の部屋を目指し階段を駆け上がっていた。
すると上から物凄い勢いで階段を駆け下りて来る足音を耳にし、俺達は警戒態勢に入った――――が、降りて来たのは小さな女の子を二人連れたサナエだった。
「主……!!」
サナエは息を切らして俺を見つめている。ひとまずサナエの無事を確認出来た俺は安堵した。
「サナエ……!!
「違うぞ主! 拙者は
「………………」
サナエの聞き間違いに俺が絶句していると、おもむろにティアとミレーヌが口を開いた。
「ラナ様、ご無事で何よりです。計画は滞りなく進んでおります。一階の子供達の事はグレンさんとハンスさんにお任せしております」
「加えて私達以外のマザーも向かわせたわ。恐らく大丈夫じゃないかしら?」
「そうか。ご苦労じゃった。ならば妾は引き返して女王と相見える事にするかのう」
「えっ……! せっかく脱出出来たのに!? また戻るの!? 子供達は大丈夫なの?」
ティアとミレーヌは現状をラナに報告。それを受けたラナは階段の上を見つめた。するとその横にいたもう一人の女の子が驚いた様子で声を上げた。
――ん……?
この子……どこかで見たような……?
一階の子供達か?
いや、なんだかそれよりも前に会っていたような気がする……。
俺はそんな事を考えながらその女の子の顔をじっと見つめていた。すると彼女はこちらに顔を向けにこりと笑った。そして彼女の言葉を受けたラナがそれに答えるように口を開く。
「子供達は大丈夫じゃ、ミシェルよ。この塔に女王以外の敵はおらぬ上に頼もしい仲間もついておる。じゃが、この塔において、たとえ子供達を逃がす事が出来たとしても女王をどうにかせん事には何も解決しないのじゃ」
「で、でも……」
「そうよ。本気で怒り狂った女王は何をしでかすかわかったもんじゃないわ」
「最悪の場合、この世界の人々の魂を操作して全員を子供に変えてしまうやもしれません……」
「…………それはまずいね」
ラナの言い分に不安そうな表情を見せるミシェルと呼ばれる女の子。続いてミレーヌとティアも最悪の想定を口にする。それを受けたミシェルは流石にまずいと思ったのか、生唾を飲み込んだ。
「つまり……一刻の猶予も無いってわけだな。すぐにでも女王を倒して――――っ……!?」
「「…………っ!!」」
俺は状況を整理してラナに話を始めた。するとラナ達の背後――――つまり塔の上階から、あろう事か女王が音もなく降りて来た。
それに気付いた俺とティアとミレーヌは言葉を失う。
「どうしたのじゃ? 三人して……?」
「主? どうかしたのか?」
「後ろに誰かいるの?」
三人は困惑していた。そして一斉に後ろを振り返る。するとそこにいた女王は鬼の形相で右手を振り上げていた。刹那。その右手は青白い光を纏い、サナエに向かって振り下ろされた。
「サナエ! 避けろォッ……!!」
「…………っ!?」
俺は必死に叫んだ。俺の声に反応したサナエはすぐさま刀に手を掛けた。しかし遅すぎた。女王が放った青白い光はサナエの身体を包み、みるみるうちに縮めていった。
「あ、主……?」
「サナエ……お前、その姿……」
サナエはいつもより少し高い声で俺を呼んだ。俺は膝から崩れ落ち変わり果てたサナエの姿を見つめた。
「よくも妾を騙したな……。これだから大人は嫌いなのじゃ……。貴様はそうしてずっと子供の姿でおれば良い」
女王のスキルによってサナエは幼児化させられてしまった。俺はあまりのショックに立ち上がることさえ出来ずにいたが、ゆっくりとサナエに近付きすっかり大きくなってしまった服で小さな彼女の身体を覆った。
「よもや、こんなにも早く追いかけて来るとはのう……。そんなに妾が可愛いかえ? アニマよ」
俺が小さなサナエを抱きかかえ悔し涙を浮かべていると、ラナは女王アニマを睨み付けそんな言葉を言い放つ。
「
「ふっ。真似じゃと? 笑わせるな……妾こそ
「…………!? もしや貴様……姉上か……?」
「「…………っ!?」」
アニマはラナの口調について疑問を抱く。そんな彼女の問いにラナは鼻で笑い、そう答えた。するとアニマは驚愕した表情で"姉上"と口にした。それと同時にその場の空気が凍りついた。
「あ、姉上ってそんな……。ラナちゃんは女王のお姉ちゃんなの?」
ミシェルは戸惑いながらもラナに問うた。するとラナはゆっくりと口を開く。
「そうじゃ……。こやつは妾と血を分けた姉妹じゃ――――」
ミシェルの問いにラナは自分と女王が姉妹である事を明言した。俺達はその事実に驚愕した。
その後、ラナの口から衝撃的な過去が明かされる。
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