第10話 神の恵み【スキル】
翌朝
俺とグレンは特訓の為、サクラ町を出た所にある広い空き地に来ていた。
その空き地には集落の人達の畑も無く、一件の古い家があるくらいで他には岩や石以外には何も無い場所だった。
「よし! んじゃあ早速特訓開始! ……といきたい所だが、リオン。テメェはスキルについてどんくらい知ってんだ?」
「どのくらい? うーん。神に与えられる能力って事と、一人一つでランダムでしか与えられないって事と、イメージして使うって事くらいか?」
俺は人斬りに敗れ、気を失って眠っている時、シェルミとの会話を思い出していた。
そこで知り得た情報をグレンに伝えるも、彼は呆れた表情を見せた。
「んだよそれ!? 全然知らねぇじゃねえか! ったく、もういい。俺が一から説明してやるからよく聞けよ?」
「う、うん。わかった」
どうやらシェルミがスキルについて教えてくれた事はごく一部だったようだ。
そして突然、グレンによるスキル講習が始まった。
◇
「まずスキルってのは神の恵みとも言われていて、魔法とは全く別もんの力だ。魔法は魔石を使う事でしか使えねぇのに対し、スキルは多少の体力は消耗するが使おうと思えばいくらでも使える。んでこのヨスガの里にいる連中は、全員もれなく何かしらのスキルを持ってる」
「ぜ、全員!? 俺の村の人は誰一人スキルなんて持ってなかったはずだけど……」
「そうなのか? じゃあ何でリオンはスキルを持ってんだ?」
「確かに……。何でだ?」
「わからねぇのかよ!!」
――何で? 確かに言われてみればそうだ。
フィフシスの人達は誰もスキルなんて持ってなかったのに何で俺だけスキルを持ってるんだ?
夢の中でシェルミと意識が繋がったからか?
それとも俺がその時既にヨスガの里にいたからか?
考えてもわからないな……。
「ヨスガの人はみんなある日突然スキルが発現するのか?」
「そうだ。スキルが発現した時、全員『神の声が聞こえた』って口を揃えて言う。んで、それから神の声を聞いた奴らは聞いた通りの能力が使える様になるっつーわけだ」
「なるほど、神の声か」
「そうだ。どうだ? 少しはスキルについてわかったかよ?」
「あぁ。勉強になった。ありがとう」
俺が礼を言うとグレンは一度頷き話を続けた。
「あとスキルについてもう一つ。大事な事がある」
「大事な事?」
「あぁ。それはスキルにレベルが存在するっつーことだ」
「レベル?」
「あぁ。俺には一つ思い当たる節があってな。この町の奴らの何人かに聞いて回ったら、全員レベル1で使える能力も一つだけっつーことがわかった」
――ヨスガの里の人達全員、使える能力が一つしか無い?
じゃあグレン達は何故二つ使えるんだ?
「ここからは俺の推測だが、スキルが発現した段階で全員スキルレベルは1。使える能力も一つだけ。だが何らかの条件を満たせばスキルレベルが上がり使える能力の幅も広がるっつーわけだ」
――そういう理屈か……。
でもその条件って何だ?
「なるほど。でもグレンはどうしてそんな推測が出来たんだ? レベル2のスキル持ちの人を見た事があるとか?」
「そんなもん決まってんじゃねぇか! 俺がスキルレベル2だからだよ!」
俺の問いにグレンはとても得意気な顔で返答した。
――なるほどな。
これで三人が二つの能力を使える理由がわかったな。
それにしても今の話……。
全員初めはスキルレベルが1だけど、何らかの条件を満たせばレベルが上がるって、確かシェルミも似たようなことを言っていたな……。
スキルは与えたけど能力は完全じゃないとか。
シェルミの能力が届く所に行けばスキルを使いこなすことが出来るとかなんとか。
でも町の人と同じヨスガの里にいるのに、何故グレン達はレベル2になれたんだ?
「グレンはレベル2に上がった時、何か特別なことをしたのか?」
「いんや? なーんにもしてねぇ。つか俺は多分物心ついた時には既にレベル2だったと思うんだよな」
「え!? 何で!?」
「わからねぇ。つーのも俺はいつスキルが発現したのか覚えてねぇんだよ。ただ神の声を聞いた者はスキル名と能力、それからスキルレベルが頭に刻まれるから、俺は自分のスキルを理解してるし能力も使えるし、自分がスキルレベル2なのもわかるっつーだけだ」
「そうなのか。グレンみたいに神の声を聞いた覚えがなくてもスキルが発現していたら自分のスキルの事はちゃんとわかるってことか」
「そういう事だ。まぁスキルについてはこんなもんでいいだろ。さてと、んじゃあ特訓開始といくか!」
「え!? 急に!?」
「おう! さっさとやんぞ!」
多くの謎を残したまま、グレンのスキル講座は終了し、特訓が開始された。
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