第11話 特訓1




 人斬りとの初戦闘の後、対策会議が行われた

 会議の末、俺はグレンに付き合ってもらい、スキル戦闘の特訓をすることとなった

 そして俺達は特訓の為、サクラ町の外にある空き地へやって来た


 


  「ここなら大丈夫そうだな。よしリオン!早速だがスキルを使ってみてくれ」

  「わかった」

 

 俺は頷き、スキルを使うイメージをして左手を口に変えた

 

  「おぉこれがリオンのスキルか。何だか少し気持ちわりぃな!ははは」

  「それは俺も思ってるよ!」

 

 笑うグレンに俺はそうツッコミを入れた

 

  「それはそうとリオン。今スキルのイメージをして使うっつー流れだと思うが、何秒かかったかわかるか?」

  「えっと、2、3秒ってとこか?」

  「いや、5秒だ。それじゃあ時間がかかりすぎて大きな隙になっちまう。まずスキルをイメージしなくても使えるようになれ。例えば…こうだ」

 

 そう言うとグレンは近くにあった大きな岩に触れ1秒もかからずそれを宙に浮かせた

 

  「イメージして使う、これを体に覚え込ませ使うまでの時間を短縮すんだ。その為には左手を元に戻しては口に変えるのを繰り返す。これを今の俺くれぇの速さで出来るまで反復練習だ!」

  「わかった!やってみる!」

 

 そう言い俺は左手を元に戻し、口に変えるをひたすら繰り返す

 グレンは簡単に言うがこれが中々難しい

 

 例えば人は目の前にある物を持ち上げようとすると、まずその物を持ち上げるイメージをしてその後身体が動く

 それを何度も繰り返している内に無意識で出来るようになっている

 そこまでの領域に持っていかないといけない

 こうしてこの反復練習はその日の夜まで続いた


 

  「ていうか、特訓が大事なのはわかるけどこうしてる間にも人斬りがまた町に現れて誰かやられちゃうんじゃないか?」

  「それは心配ない。シルキーとルドルフが夜の町を巡回してるし、脚を怪我してっからな。恐らく完治するまでは出てこねぇ」

  「なるほど。じゃあ俺は特訓に集中できるってわけだ」

 

 俺がそう言うとグレンは頷いた


 

 ぐぅーーーー


  「お?リオン腹の虫か?ははは!」

  「目覚めてから何も食ってないからな…」

  「そうだったな!よし!今日はここまでにして帰って飯にするか!」

  「おぉ!!!」

 

 やっと飯が食える!

 俺がそう思った時、一日かけても出来なかったイメージ無しでのスキル行使が容易く出来てしまった

 

  「うぉ!?左手がイメージしてないのに口に変わった!?なんで!?」

  「今イメージしてねぇのか!?」

  「してない!なんでだ?」

  「そうか!飯が食える、つまり食うっつー行動に反応したっつーことか」

 

 なるほど

 今までスキルを使う=左手を口に変えるってイメージでやってきたけどそうじゃない

 俺のスキル【悪食】の能力は〈何でも捕食できる〉であって左手を口に変えることじゃなかった

 目に見えてわかる変化に気を取られてその事をすっかり忘れていた

 

  「左手、元に戻してみろ」

  「ん?うん」

 

 俺は言われるがまま左手を元に戻した

 するとグレンは俺に向かってこぶし大の石を投げてきた

 

  「これを食え!リオン!」

  「うぇ!?お、おぉ!わかった!」

 

 俺は左手を口に変えるのではなく、目の前に飛んでくる石を食おうとした

 するとイメージするよりも先に左手が口に変わり、一口で丸呑みした

 

  「出来た……!」

  「一日でものにするとはやるじゃねぇか!よし、明日からはこれを反復しつつ次の段階へ移行する」

  「えーーーまだあんのー?」

  「当たり前だバカ!このくれぇ出来て当然だ!」

  「えーーーーー……」

 

 こうして特訓の一日目が終了した




 

 次の日

 俺達は昨日と同じ場所に来てひたらすら反復練習を繰り返していた

 おかげでイメージ無しでのスキル行使は1秒もかからず出来るようになっていた

 

  「よし、じゃあそろそろ次の段階にいくか!」

  「昨日も言ってたけど次の段階って?」

  「リオンの能力は〈なんでも捕食する〉だが、それには恐らく制限がある。前にスキルが発現したらスキル名とレベルと能力がわかるって話したと思うが、制限はわからねぇ。それは自分で見つけるしかねぇ」

  「そうなのか。確かにルドルフやシルキーにも制限があった。でもグレンは制限ないって言ってたよな?」

  「今のところは…だな。これからレベルが上がって出来る事が増えりゃそれに制限があるかもしれねぇ」

  「そうか。じゃあまず俺は今のスキルにある制限を見つけないといけないんだな」

  「そうだ。そこでだ。とりあえずその辺の石とか草とか、大きさが違う物を片っ端から食え」

  「あのさグレン、簡単に食えとか言うけどこれ食いもんじゃないよ?昨日からずっとそうだけど俺にだって抵抗あるんだよ?」

  「うっせぇよ!強くなりてぇんだろ!」

  「いや、強くなりたいとは一言も……」

  「いいから黙ってやりやがれ!」

  「は、はいっ!!!」


 

 そして俺の特訓は第二段階へと移行した

 この特訓でわかったスキルの制限は

 口の大きさ以上の物は一口では食えない

 一口で食えない物は何回かに分けて食うか鋭い歯で噛み砕く

 能力からして食おうと思えば、石だろうが草だろうが抵抗はあるが、なんでも食える

 最後のは俺の気持ち次第だから制限とは言えないかもしれないが、そしてもう一つ

 最大にして最悪の制限があった

 それは……

 

  「うぅっ。げぷ。もう、食えない……。腹いっぱいだ……」

  「おいおい嘘だろ?スキルで食ったもんが腹に溜まんのか!?」

  「そう、みたい……げぷ」

 

 そう、最大にして最悪の制限

 それはスキルで食っても俺の腹に溜まり、限界が来ると食えなくなるというものだった

 

  「うぅっ。だめだ、食いすぎた……。なんか吐きそ…」

  「お、おい!やめろ!リオンてめぇ!ここで吐いたら許さねぇぞ!!」

  「そんなこと言われても…ぐぷ。…………お、おええええええええ」

  「やりやがったこいつ……」

 

 俺はグレンの制止を振り切り、思いっ切り、それはもう清々しい程の量の汚物を吐き出した


 


☆☆☆☆☆★★★★★


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青 王(あおきんぐ)

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