第100話 牢獄
ミレーヌの胸糞悪い長話を聞かされた後、俺達は反撃の隙も無く、彼女のスキルによって拘束。そのままミレーヌや他のマザー達に監視されながら塔の
「後で女王様がお見えになるはずよ。あなた達の"処分"を言い渡しにねぇ……。それまで大人しくここで待ってなさい。じゃあ、後はティア? 頼んだわよ?」
「はい……」
不敵な笑みを浮かべながら俺達を閉じ込める牢の鍵を閉めたミレーヌは、俯き少し怯えた表情を浮かべるティアを一人監視役として置き、その他のマザーを連れて一階へと戻って行った。
「まさかこの塔、地下があるなんてな……」
「せやなぁ……。ラナちゃんもそんな事は言うてへんかったし、子供の為に使うもんではないんやろ。恐らくは、ワイらみたいな侵入者、若しくは塔の中で罪を犯した12歳以上の子らに…………」
俺の言葉にハンスは推測を交えながらこの牢屋について話を始めた。するとそれに対してグレンがおもむろに口を開いた。
「罪を犯した奴らをってのはわかるけどよ、俺達みてーに、塔の中へ侵入する奴なんて他にいるのか? 俺達が侵入出来たのだってハンスがいたからだろ?」
「確かに……。拙者もある程度、塔の中と外を観察していたが、壊された形跡や他の侵入経路など見付けられなかったからな」
「そうだよな。じゃあやっぱりこの牢屋には俺達以外に誰も――――ぬぁ……!?」
二人はそう言うと思案を始める。そして俺は二人の話に軽く相槌を打ちながら牢屋の中を見回した。
皆の話を受け、誰もいないと高を括っていたのが災いし、牢屋の隅でじっとしていた影に気付くと情けない声を上げてしまった。
「ンだよリオン!? うるせぇぞ!?」
「いや、だって……そこに誰かいるから……!!」
「「「…………っ!?」」」
グレンは怒鳴り声を上げた。それに対し俺は、牢の隅にいる影を指さした。すると皆もそれに気が付き、驚愕のあまり声が出せないでいた。
「何じゃ騒々しいのう。
そしてその影の主は、そう言葉を発すると、拘束された身体を器用に立ち上がらせノソノソと近付いて来た。
「まさかその声と口調……。もしかしてラナか……?」
俺は息をのみその影の動きを見続けた。すると牢の外にある灯りに照らされ、暗闇の中からラナが姿を現した。
「何じゃ……。せっかく忠告した上で眠らせてやったというのに、結局来てしまったのかお主らは……」
「当然だ! あんな話を聞かされて、黙っていられる方がどうかしている!」
眠い目を擦りながら相変わらずな老婆の様な口調で話す美しい容姿のラナに、サナエは拘束されている身体をバタバタとさせながら答えた。
「さすがは正義感の塊。伊達じゃないのう……」
「ンな事より……! ラナさんよォ……俺達を眠らせて先に侵入した割には、随分無様な姿じゃねーか。いくら物知りなテメェでも、この塔ん中は予想外に厳重な警備だったのかァ?」
呆れつつも若干の笑みを浮かべるラナに対し、グレンは彼女を煽るように口を開いた。
「馬鹿を言うな褐色の。妾の
「ん……? じゃあラナはわざと捕まったって事か?」
「そう言うておるじゃろうて長髪の。妾は女王に会う為にわざと捕まったんじゃ」
「ちょ、ラナちゃん……!? 監視のマザーがそこにおるんやから、あんまそないな事を大声で言うたらあかんのとちゃうか?」
俺の問いにラナは包み隠さず目的を明かした。するとハンスは牢の前に立ち、監視をしているティアの存在を危惧した。
「ん? ティアの事か? それなら心配はいらん。こやつは妾の仲間じゃ」
「仲間だァ……?」
ラナの突然の告白にグレンは怪訝な表情を浮かべる。
「ティアは妾がこの塔で情報を集める手伝いをしてくれている唯一の仲間。妾はこやつがマザーとなり、一階を任される日をずっと待っておったのじゃ」
「ちょっと待ってくれ……。全然話が見えない……。その言い方だと、ラナ殿は以前からティアを知っていたように聞こえるのだが?」
「そうじゃ? 妾はこやつが産まれた瞬間から知っておる。のう? ティアよ?」
サナエの問いに答えたラナは、ティアの名を呼びながら目線を送る。すると牢の前でこちらに背を向け立っていたティアが、こちらに向き直り口を開いた。
「えぇ。ですが、ラナ様の
「え……あ……ん……?」
ラナの突然の告白、そしてティアの変貌っぷりに俺達は声にならない声を上げる。そしてティアが頭を上げるとサナエが口を開いた。
「その、ティア
サナエはティアに深く頭を下げた。するとティアは無表情のまま口を開く。
「いえ、その様に仕向けたのは私ですから。どうか頭を上げてください。こちらこそ試すような真似をして申し訳ありませんでした」
ティアはそう言うと、再度深く頭を下げる。そして暫く固まっていた俺達も漸く口を開き始めた。
「別にいいけどよ、試すってのはどういう意味だ?」
「言葉通りです。見知らぬ顔だった為、子供達をどう思っているのか、敵意はないかの確認をしました」
「なるほどな。で? ワイらはそのお眼鏡にかかったっちゅうわけや」
「いえ。私がどうこうではなく、元よりラナ様とお知り合いだった為、こうして話しているまでです」
「そうか。ならとりあえず、俺達もラナの仲間に加わっても問題ないということだな?」
「はい……」
皆の話を聞いた上で、俺はティアとラナの目を交互に見て確認を取った。するとラナは黙って頷き、ティアは軽く頭を下げた。
俺達はひとまず安堵の表情を浮かべたが、そこへコツコツ……と、誰かが階段を降りて来る足音が聞こえ始めた。
するとラナはティアに何か合図を送る。ラナは再度牢の隅へ身を潜め、ティアは俺達に背を向けた。
そして足音の主が牢の前に立ち、扇子で口元を隠しながら見下す様な目付きで俺達を見ながら口を開いた。
「捕まったというのに何やら話し声がすると思えば、貴様ら……誰じゃ? 妾は貴様らなんぞ知らんぞ?」
俺達は目の前にいる者の圧力に、はっと息を呑んだ。
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