第111話 見覚えのあるもの
静かに怒ったアニマのスキルにより、俺とラナ、そして元から子供だったミシェルを除いて全員が幼児化されてしまった。
幼児化したサナエ、ティア、ミレーヌの三人は意識こそハッキリとしているがおおよそ戦える状態ではなかった。
「チッ……。しぶとい大人が一人いるようじゃのう……。それに……姉上も無事のようじゃ。どうしたもんか……」
アニマは舌打ちをして俺の顔を睨み付けていた。スキルを行使しても尚、幼児化していないことにひどくご立腹の様子。
するとラナはゆっくりと立ち上がりスキルを行使。大人の姿へと変身し、アニマの眼前へ立った。
「よくもやってくれたのう……アニマ。妾は
「妾のスキルを前にしてもそのような態度をとるとは流石姉上じゃ。じゃが……この階層の主は妾じゃ! 今度こそ姉上も純新無垢な子供の姿にしてやる……!」
火花を散らすラナとアニマ。その後方で俺は両手を口に変え、虎視眈々とアニマの隙を狙っていた。
「たった今決心した……。妾はお主を殺して、スキルを解除し皆を元に戻す……!」
「やれるものならやってみろ……。但し、妾が姉上に触れた瞬間、全て終わるがな……!」
ラナはアニマを睨み付け啖呵を切った。対してアニマは余裕の笑みを浮かべ両手に青白い光を灯す。
そしてラナは自らの腕の肉を噛みちぎり大量の血を流した。
「…………っ!?」
「――――【
俺はラナの奇行に戸惑いを隠せないでいた。するとラナはスキルを行使し、流れ出た自らの血を一瞬にして凝固させ一本の剣に変えてみせた。
――す、すげぇ……。
俺はラナのスキルに感心していた。するとラナは真正面からアニマに斬りかかった。
「死ねぇ……! アニマァッ……!!」
「ふんっ……!」
ラナの動きは決して速くはなかった。だが威力は中々のものだった。それを証拠に剣が触れた塔の壁には大きな傷がついていた。
しかしアニマも負けてはいない。ラナの剣筋をしっかりと見極めそれを躱していく。それでも尚、ラナは剣を振り続けた。
――こんな階段の中腹で戦っていたら剣で戦うラナが不利になってしまう……。
どうにかして広い場所で戦えないか……?
などと考え、俺はおもむろに塔の内壁を捕食した。
「り、リオン……! お主は何をしておる……!?」
「…………!?」
「ここじゃラナが戦いづらいだろ! 俺が壁に穴を開けるから、そこから外へ出て広場で戦うんだ!」
「…………っ! なるほど……。承知した!」
俺の提案を受けラナはニヤリと笑う。俺は引き続き壁を捕食し難なく壁に穴を開けた。
「ラナ! いいぞ!」
「助かったぞ、リオン……!」
ラナはそう言うと壁の穴から飛び出した。そして背に血で作った翼を広げゆっくりと一階の広場へ降り立った。
「チッ……。鬱陶しいのう……!」
それを見たアニマは同じように四階付近から飛び降りようと試みたが、すぐに思い直し目を血走らせて階段を駆け下りていった。
「俺達も行こう!」
俺はそう言うとサナエとティア、そしてミレーヌとミシェルを連れて一階の広場へと向かった。
◇
俺達が漸く広場へと到達した頃には、一足先に到達していたラナとアニマが先と同様に戦闘を開始していた。
そして、本来ならば子供達がいる広場には既に誰もおらず、グレン達の手によって避難が完了した後だった。
「グレン達は上手くやったみたいだな。後はアニマを倒すだけだ……!」
俺は両手を口に変え、アニマに突貫。ラナの剣技の間を縫い、アニマに攻撃を繰り出す――――が、それはラナの剣によって遮られた。
「何をするんだ……!?」
「馬鹿者! アニマに気安く近付いてはならぬ! 奴は触れただけで相手を幼児化させられるのじゃぞ……!」
「……っ!」
――そうだった……。確かに今のは迂闊だった。
ラナに止められていなければ、確実に幼児化されていただろう。
でも俺には接近戦しか無い……。
これじゃあ足手まといじゃないか……。
「
などと考えていると、サナエの声が響いた。俺はそれに黙って頷きアニマの背後へ回った。
「させるか、たわけ……!」
するとアニマは背後に手を伸ばす。俺はそれをくるりと躱した。
「どっちがたわけじゃ……! 正面が手薄じゃぞ……!?」
「ぐあぁぁぁぁ……!!!」
その隙にラナはアニマの身体を斬りつけた。階層内にアニマの悲痛な叫びが木霊する。
――アニマのスキルは強力。相手に与える影響は甚大だ。
でもスキルの性質上、物理攻撃は皆無。
加えて防御力も無い。
ラナの一撃でかなり消耗しているはずだ……!
「今じゃリオン……!!」
「わかってる……! 全部喰らって終わりにしてやる……!」
ラナは俺にトドメを刺すよう促した。俺は両手の口でアニマを捕食しようと飛びかかる。
刹那――――目の前にワープゲートが開いた。
「は……?」
「「…………っ!?」」
俺は困惑した。それは
「そのスキルは……
俺が困惑しながら声を発したその時。ワープゲートから一人の男が姿を現した。
「……ったく何をやっているのかしら。あらぁ? 階層主ちゃんがピンチねぇ? アタシ、もしかしてナイスタイミングだった?」
しかし、そこに現れた男はグレゴールではなく、見覚えのない髪の長いスラリとした男だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます