第5話 シルキーとルドルフ


「なぁグレン? その人達は一体……?」


「おぉ、わりぃわりぃ。リオンにもちゃんと説明しとかねぇとな」


 そう言うとグレンは二人の紹介を始めた。


「まず、この無駄に元気が良い、ちっせぇ女がシルキーだ。馬鹿でドジでどうしようもねぇ奴だが、すばしっこくて戦闘では中々役に立つ。こう見えて俺より一つ歳上だぜ? 色気ねぇだろ!?」


 グレンはシルキーの紹介を終えると、ニッシシと白い歯を見せながら笑った。

 するとシルキーは「もう! 余計なお世話だよー!!」とグレンの頭をポカポカと叩いた。

 そして気が済んだのかニコニコとした笑顔で俺の方に向き直し口を開く。

 

「どもー! シルキーって言いまーす! よっろしくー! 君はリオンって言うんだねー! じゃあ……あだ名はリオっちだね!」

 

「り、リオっち!?」

 

 ――この元気溌剌とした娘がシルキーか。

 長い金色の髪を頭の上に束ねていてお姉さん感を演出しているけど、背の低さも相まって少し幼く見えるな。

 服装は町の人達と似ているけど、それよりもかなりの軽装で、すばしっこいというのにも納得出来る……が肌の露出が多くて少し目のやり場に困る。

 だけどグレンの言う通り色気は全く無い。

 そして俺に変なあだ名を付けるのはやめて欲しい。

 


「んで、こっちのでかい男がルドルフ。見た目通り頭が良くて作戦や戦略を立てるのが上手い。しっかりしてるが俺より二つ歳下だ。俺の事を兄さんって呼ぶから俺もこいつの事は弟みてぇに思ってる」

 

「どうも初めまして、リオンさん。僕はルドルフと言います。よろしくお願いします」


 ――この背が高くて礼儀正しい男はルドルフというのか。

 グレンの言う通り言葉使いもそうだが、少し長めの銀髪を綺麗に整えていてとても知的に見えるな。

 そしてその綺麗な銀髪は褐色の肌にもよく映えている。

 加えてシルキーと比べてきっちりと服を着こなしているからか、より大人っぽく見える。

 

「とまぁ、コイツらは個性だけは強いが基本はいい奴らだ! それは俺が保証する。だからリオンも仲良くしてやってくれな」


「あぁうん。そうみたいだな。よろしく、シルキー、ルドルフ!」


 俺がそう言うと二人は笑顔で手を振り軽く頭を下げた。

 するとグレンは一つ息を吐き、真剣な表情へと変わる。

 

 

「んで、早速だが本題だ。シルキー、ルドルフ。俺達はリオンの故郷探しを手伝う事にした!」

 

「こきょー?」

 

「ちょっと言ってる意味がわからないよ兄さん」


 グレンの話に二人は首を傾げている。

 二人の言う通り、確かにこれでは説明不足なのは否めない。

 そして俺は二人に今の現状を説明した。

 


「――――とまぁこんな感じなんだ。何とかして家に帰りたいんだけど、皆手伝ってくれるか?」


 俺は説明を終えると二人の顔を見つめた。

 

「うぅ、うぇええん……! リオっち大変だったんだねぇ……! リオっちが可哀想だよぅぅ!」


「何でシルキーが泣くのさ!?」


「あはははは!! シルキーテメェ泣き過ぎだろ!」

 

 俺の話を聞き、涙を流し始めるシルキー。

 そして彼女を慰めるルドルフと、それを見て笑うグレン。

 この三人の構図は何故だか凄くしっくり来た。


 ◇

 

 そんなこんなで和気藹々とした空気に揉まれていると、大泣きしていたシルキーが涙を拭いて口を開いた。

 

「うぅ……わかった……! 私、リオっちの故郷探しのお手伝いするよ……!」

 

「そうだね、僕も出来る事なら何でもお手伝いしますよ!」


 するとそんなシルキーにルドルフも続いて声を上げる。

 

「へへっ。お前らならそう言ってくれると信じてたぜ!」

 

 二人の言葉を聞き、グレンは鼻を掻きながら少し嬉しそうに笑った。

 そんな中、俺は重大な事に気が付き冷や汗を垂らしていた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 確かに手伝ってくれるのは有難いけど、俺お金とか無いけど大丈夫……?」

 

 するとさっきまでの和気藹々とした空気がピタリと止まる。

 

「お金がないだって……?」

 

「それは……いけませんね」


 そしてシルキーとルドルフの二人は俺の顔を物凄い剣幕でまじまじと見つめた。

 するとグレンは慌てて二人と俺の間に割って入る。

 

「いいんだよ、金は! 俺が勝手に連れて来たんだ。金なんて取らねぇよ。ただ俺がリオンを助けてやりてぇって思っただけだ!」

 

「グレン……! ほんと……良い奴……!」


 俺は勇ましくそう叫ぶグレンに対し、羨望の眼差しを向ける。

 そしてグレンの想いの丈を聞き、二人の表情は和らぎ、気が付けば俺に詰め寄るのをやめていた。

 

「もう……! わかったよー。グレンがそう言うならそれでいいよ!」

 

「僕も兄さんがそれでいいなら何も問題ないよ」

 

「ありがとよお前ら……」

 

 そう言うとグレンは再度、鼻を掻き照れくさそうにしながら笑った。


 するとルドルフが突然真剣な表情になり口を開いた。

 

「でも兄さん、今取り掛かってる案件はどうするんだい?」

 

「あぁ。人斬りの件だな……」


「そうだよー! 人斬りだよ! どうするのさー!!」

 

「人斬り……?」


 グレンが人斬りという言葉を口にするとその場の空気がガラリと変わった。

 果たして、人斬りとは一体何なのか。

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