第4話 グレンという男



 男の助けもあり何とか追手から逃げ切る事に成功した俺はそのまま男の家に身を隠させてもらう事になった



  「いやーー、しかし危なかったな!!」

 

 「ありがとう!マジで助かったよ……。あんたがいなかったら今頃俺捕まってたよ」

 

 「まぁそうだろうな!ハハハ!んで?お前名前は?歳は?」

 

 「俺はリオン!歳は16だ!」

 

 「リオンか。俺はグレンってんだ。歳は20だ。リオンより4つ歳上だな。よろしくな!」

 

 そう言うとグレンは歯を見せて笑った

 グレンは俺より少し歳上だった

 

 褐色の肌に白い歯を見せて笑う顔と灰色の短髪がよく似合っている

 少しきつそうな顔をしていて口調も少し荒っぽい

 だけど醸し出す空気?は何だか凄く優しい感じがした

 

  「んで?リオン。てめぇなにやらかした?」


 そう言うとグレンは何やら楽しそうにニヤニヤしながらそう聞いて来た

 

  「いや俺何もやってないんだよ!ただ故郷に帰りたくて帰り方聞いてただけなんだよ!!」

 

  「はぁ?故郷ってお前……。変な事言う奴だな。そういや服もここら辺じゃ見かけねぇ感じだしよ?リオンはどこの集落から来たんだ?あんなとこで何してたんだ?」

 

 そのグレンの質問で俺はハッとした


 

 そうだ、俺はフィフシス村に帰る手掛かりを探しに来たんだった……!

 アイツらのせいですっかり忘れていた……

 あと俺の服装やっぱりそんなに目立つ……?

 

 そして俺はひとまずグレンに自分の現状を話す事にした


 

 「実は俺、この里の生まれじゃないんだ。フィフシスっていう村から来た。ていうか気が付いたらここにいたんだ。それで村に帰ろうと思ったんだけど、帰り方がわからなくてさ……。だからとりあえず賑わっている場所に行って色々話を聞いて回ろうかと思ってたら、急にアイツらが絡んできて――」

 

 「おいおい、ちょっと待て!!情報量が多すぎる!まずフィフシスってなんだ?俺はそんなとこ知らねぇぞ?」


 するとグレンは驚いた顔をしながら慌てて俺の話を止めそう言った

 

 「はぁ!?何言ってるんだ?フィフシスは俺の故郷の名だよ。知らないのか?」

 

  「知らねぇよ!!じゃあてめぇこの町の名前わかんのかよ!?」


 俺がそう言うとグレンは語気を強めて返して来た

 

  「……………………知らない」


 俺はその問いにそう答えるしかなかった

 事実、本当にこの町について俺は何も知らなかった

 

  「そうだろうが。……ったく!しゃあねぇから俺がこの町の事教えてやるよ」

 

  「マジ?ありがとう!助かるよ!はは!良い奴なんだなグレン」

 

  「うっせぇよ……!」


 この町について何も知らない俺にとっては願ってもない事だった

 そしてグレンは少し照れながらもこの町の事を色々と説明し始めた――

 


 「まずここの名前はヨスガの里だ。外にでけぇ城があったろ?そこにこの里で一番偉え将軍ヨシユキとその家族と三人の侍が住んでんだ」


 

 でけぇ城って多分壁のとこからでも見えたあのでかい建物の事だよな

 あんなでかい家に人が住んでるのか

 俺の家とは大違いだな……

 

 

 「んでその城の手前にあんのが今俺達がいるサクラ町だ。町にはリオンにさっき絡んでた役人とか平民とかゴロツキとか色んな奴らがいる。もしかしたらリオンの故郷の事を知ってる奴がいるかもしれねぇな」


 そう言いグレンは少し俺に笑いかけてきた

 グレンは口調が荒くて気付きにくいけど、すごく良い奴なんだなと俺は思った

 口には出さなかったけど


  「リオン?てめぇ何にやけてんだ?聞いてんのか?俺の話を?」

 

  「あぁごめん。聞いてる聞いてる!続けてくれ」


 俺は考えていた事が表情に出てしまっていたのか少し笑っていたようだった

 それをグレンはツッコんで来たが俺はそれを慌てて受け流した

 するとグレンは少し首を傾げながら話を続けた

 

  「……?まぁいい。後はそうだな……。武士だな」

 

  「武士?なんだそれ?あとさっき言ってた侍ってのもよくわからないんだけど」

 

  「あぁ。武士ってのは刀を持って戦う奴らの事だ。さっきの役人も刀持ってただろ?そいつらもそうだ。んで侍ってのは将軍を守る為に戦う武士の中でも強さで選ばれた三人の事だ」

 

  「なるほどなー。侍かー。それと武士って役人以外にもいるのか?町に刀持ってる人が何人かいたけどそいつら全員役人なのか?」

 

  「いや役人以外にも刀を持ってる奴はいる。数は少ねぇがな」

 

  「そうなのか。よくわかった!ありがとう!」


 俺が礼を言うとグレンは頷いた後、少し黙ってからまた話し始めた


 

  「んで?リオンはこれからどうすんだ?やっぱ故郷に帰る方法を探すのか?」

 

  「んーーまぁそうだな。とりあえず故郷に帰るってのが第一目標だな」

 

  「そうか……」


 グレンはそう言うと腕を組み目を瞑ると何か考え始めた


  「…………よし、決めた!」

 

  「ん?何がだ?」

 

  「俺がリオンの故郷探しを手伝ってやる!」

 

  「え!?なんで!?いや、有難いけど……なんで!?」

 

  「へへっ。俺はこの町で『何でも屋 オアシス』っつーのをやってんだ。この家はその事務所でもあんだよ」

 

  「え!?そうなの?まだ全然若いのに凄いんだなグレンは」


 俺がそう言うとグレンはまた少し照れくさそうにしていた

 すると――――


 ガチャ


 

  「たっだいまーー!!」

  「今帰ったよ兄さん」


 ――――家の中に二人の男女が入ってきた


  「おー!帰ったかシルキー、ルドルフ」

 

  「あれー?その人誰ー?新人さんー?」

  「もしかして兄さん……誘拐……?」

 

  「んなわけねぇだろ!!依頼人だ!依頼人!」


 

 グレンはそう言うと二人を俺に紹介し始めた――――





☆☆☆☆☆★★★★★


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青 王(あおきんぐ)

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