第3話 絶望



 

 夢から覚め、目の前に広がる知らない世界に俺は困惑していた

 

 どこなんだここは……?

 母さん……?

 父さん……?

 フィフシス村は……!?

 


 そう考えつつ俺はとりあえず壁の穴から出てみる事にした

 そして自分が出てきた穴の周辺を確認してみるとそこにもフィフシスと同じように壁があった

 

 

 壁はあるけど、ここは俺が知ってるフィフシスじゃないな

 じゃあ俺はどこへ来てしまったんだ?


 

 ただ呆然とその場に立ち尽くすしかなかった俺は辺りを見渡し遠くに大きな建物を見付けた


  「なんだあれ?でかい家?か?その周りもなんか賑わってそうだしとりあえずそこに行ってみるか」

 

 俺はそう独り言を呟くと辺りに広がる古い家や畑がある場所を抜けた先にある賑わった場所へと向かった



 一時間程歩くとようやくその場所へと辿り着いた


  「ハァハァ。遠すぎだろ!……ていうかめちゃくちゃ人が多いな?」


 辺りを見渡すとそこら中に人がいた

 それに俺が見た事ない服を着た人ばかりだった


  「なんか俺すごい目立ってない……?」


 そこにいる人達に対して俺の服はボロボロで材質も違っていたせいでかなり目立つのか、道行く人が俺を凝視していくのがわかった


  「おいお前。どこの集落の者だ?」

  「変わった格好をしているな?何者だ!?」


 あまりに俺が挙動不審で怪しかったのか体格の良い男が二人、俺の前に立ち話しかけて来た


  「何者だって……俺はリオンだ!それに変わった格好をしてるのはあんたらだろ!?」

 

  「……?コイツ何言ってるんだ?」

  「……?さぁ?」


 俺がそう言い放つと男らは顔を見合せ不思議そうな顔をしていた


  「なぁ!そんな事はいいからさ!フィフシスって村知らないか?俺の家があってそこに帰りたいんだけど帰り方がわからないんだよ。おっさん達何か偉そうだし知ってるなら教えてくれないか?」

 

  「フィフシス?そんな村はこのヨスガの里にはない!」

  「お前頭大丈夫か?」

 

  「俺の頭は大丈夫だ!!お前らの方こそおかしいんじゃないのか!?変な服着てフィフシスの事知らないなんてよ!」

 

  「……もういい。お前ちょっとこっちに来い!」


 俺の話に呆れたようにため息混じりにそう言うと、男は俺の腕を掴みどこかへ連れて行こうと引っ張った


  「何するんだよ!!痛いって!……離せ!」


 俺はそう言い男の腕を払った

 すると男らは血相を変え腰に挿していた長い棒の様な物からナイフの長い奴みたいな物を出してきた


  「お前!役人に抵抗するのか!?反逆罪に問われるぞ!?」

 

  「何が反逆罪だ!先に腕を掴んできたのはそっちだろ!それに何だ?その長いナイフは!?」

 

  「何ぃ!?お前刀を知らないのか?益々怪しいな!!?」

  「さてはお前……里に危害を及ぼすつもりだな!?そうはさせんぞ!!」


 男らはそう言うと刀とやらで俺にいきなり斬りかかって来た

 俺はそれを後ろにひょいっと避けると更に追撃が来た


  「あっぶないなー!殺す気か!」

 

  「最悪……そうなっても良いと思っている……!」

 

  「はぁ!?ふざけんな!俺はただ家に帰りたいだけだ……っ!!」


 男らは次々に俺の顔面に目掛けて刀を振り下ろして来た

 何度か避ける事が出来たがいよいよ本当に斬られそうになる



 やべぇ!これは斬られる……!

 殺される……!



 俺はそう思い咄嗟に左手を刀から身を守る様に頭の上に上げ、目を瞑った

 すると――――――



 ガキンッ!!



 ――――突然大きな音が鳴り響いた


 

 あーーー今絶対腕斬られたじゃん

 ていうか人の腕切り落とす時あんな音鳴るんだ

 腕とか切り落とされたらあまりに痛すぎて逆に痛みとか感じないんだな

 左腕なくなったらこれからの生活どうしよう

 不便だなー

 これからは狩りに行かなくてよくなるかもなー

 これからは母さんに甘えれるだけ甘えてゆっくり過ごすのもありだなー

 

 …………………。

 ていうか本当に痛みが全く無いな?

 どうなってるんだ?

 さすがにおかしいよな……


 

 そんな事を考えながら俺は恐る恐る目を開けた

 すると目の前には先程まで強気な顔で俺に斬りかかって来ていた男らの顔が物凄く青ざめていた


 

 ……ってあれ?

 なんだコイツら?

 二人ともすごい驚いた顔してる?

 


  「なんだよ!人の腕切り落としといてその顔はないんじゃないの?どうしてくれるんだよ!このう……で!?」


 そして俺はそう言いながら自分の斬られたはずの左腕を二人の前に突き出した

 しかし俺の左腕は無事……どころか獣の如く鋭い牙を生やした口になり、刀を噛み砕いていた


 

 えーーー!?

 今何が起こった!?

 そういえば夢でスキルがどうのこうの言ってたような……

 アレ夢じゃなかったのか!?


 

  「お、お前!!その手の口は何だ!!??」

 

  「俺のスキル!!……みたいだ(小声)」

 

  「スキルだと!?クソ!!ふざけた能力しやがって!!」

  「まだ刀一本やられただけだ!ひっとらえろ!!」


 そう言うと男らは更に凄みを増して襲いかかって来た

 男らは左右に分かれ、わざとタイミングをズラして攻撃を繰り出してくる


 

 どうする?

 このままじゃ確実にやられる……!

 左からは刀で右から素手か……

 これは……やるしかないか……!


 

 俺はそう心に決めると左手の口で左側の男の刀を掴み噛み砕いた

 そしてそのまま右から殴りかかって来た男の顎を右脚で蹴り上げた



  「ひゅーーー!毎日狩りしててよかったー!運動神経だけはいいんだよな、俺」

 

  「ぐっ……ぐふっ……」

  「き、貴様ぁ!!」


 俺に蹴られた男は顎を手で押さえながら蹲っていた

 もう一人の男は俺を睨み付けている

 


 ピーーーーーーーー!!ピーーーーーーーー!!!


 

 そして俺を睨みつけていた男は首から下げていた笛を二度吹いた

 すると次から次へと俺がいる方へ体格のいい男達が集まって来るのが見えた



  「いや、待って!これは流石に……無理!!!」


 俺は辺りを見渡し逃げ道を探した

 すると――――



  「おい!こっちだ!!来い!」



 ――――と近くの家の陰から俺に向かってそう言い手招きをする男がいた


 俺は男の方へと走った

 それはもう全力で走った

 そして俺はそのまま男に連れられ路地を抜けて追っ手を振り切った――――



☆☆☆☆☆★★★★★


ここまで読んで頂きありがとうございます


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毎日お昼の12時10分に一話ずつ更新していきますので

是非また読みに来て頂けると嬉しいです


青 王(あおきんぐ)

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