第6話 人斬り
グレンが人斬りという言葉を口にするとその場の空気が変わった
「人斬りの件か……」
「人斬り……?」
「そーだよ!人斬りだよ!どーすんのさ!」
「そうだよ。役人が対応できないから僕達に依頼が来たって言うのにこれを放置することは出来ないよ」
三人は真剣な顔付きで考え込んでいる
「なぁ、その人斬りってなんだ?」
「ん?あぁ。人斬りっつーのは夜な夜な何の罪もねぇ人を無差別に斬りつけて回る極悪人だ。しかも役人達は犯人の顔や名前すらわからねぇときた。男か女かもだ。町の連中は皆ビビりまくって夜も出歩けねぇ。んで俺らのとこに捕縛依頼が来たっつーわけよ」
そんなに派手に暴れ回っていて、顔も名前も性別すらわからないってそんな事あるのか?
でもどうやらその依頼を先に片付けないと俺の故郷探しは後回しになりそうな雰囲気だしな
それに俺は金が無いから手伝ってくれても何のお礼も出来ない
…………!そうだ!
俺はいい案を思い付くと直ぐにそれを三人に伝えた
「もし良かったらその依頼俺にも協力させてくれないか?俺の故郷探しを手伝ってくれるお礼にさ」
俺がそう言うとシルキーとルドルフがバッと俺の方に振り返り俺の手を取る
「リオっちー!君いい人だねー!大歓迎だよー!」
「リオンさん!本当ですか!?それは凄く助かります!是非お手伝いを!」
「あ、あぁ!まぁ依頼の代金を払えない代わりにさ……!」
「ちょ、ちょっと待てお前ら!…って聞いちゃいねぇ……」
こうして俺はグレンの静止を他所に、オアシスの面々に加わり人斬りの捕縛依頼を手伝うことになった――
――――そしてそのまま人斬りを捕縛する為の作戦会議が行われた
「まずグレン達が持ってる人斬りについての情報を教えてもらえないか?」
「そうだな。俺達が持ってる人斬りの情報は………………何もねぇ!」
「はぁ!?マジで何もないのか!?」
「なーんにもわかんないだよー!!」
「面目ないです……」
ここまでなんの情報もないとは……
どうする?
「だが作戦はある!」
俺がそう思案していると、そうグレンは声高々に言った
「作戦?情報も何も無いのに?」
「あぁ。リオンの言う通り相手の情報は何もねぇ。だから相手の元へ踏み込むことも出来ねぇ」
「ですから僕達は人斬りを割り出す作戦を立てました。その作戦はこうです。今晩は誰も家の外に出ないよう町中に予め伝えておきます。城に住んでる将軍家と侍は滅多に町には出て来ませんしそこには敢えてそれを伝えません。そうすれば今晩のサクラ町にいるのは僕達と他にいるとすれば人斬りだけという事になります」
「なるほど!そういう事か!」
俺は作戦の全容を聞き納得した
捕縛するとなれば遅かれ早かれ人斬りとは対峙しなければならない
しかし人斬りの情報は一切なく誰をどう捕縛すればいいかわからない
なら町に自分達と人斬りしかいない状況を作れば、人斬りの情報がなくても俺達の前に現れた奴が人斬りだと断定できるというわけだ
「さすがだな!ルドルフ!頭が良いって言われてるだけあるな!」
「それ程でもないですよ!」
俺がそう褒めるとルドルフは照れ笑いを浮かべながら頭を搔いていた
すると――
「たが、この作戦には穴がある」
――とグレンが言った
「え?そうなのか?」
「そうだね、兄さん。それは人斬りの正体が町の人達以外でなければいけないということ。何せ人斬りが町の人だったら家から出るなと僕らが伝えた時点で作戦がバレてしまって出てこないからね」
「あ、確かに!じゃあグレンは人斬りが城に住んでる奴らだと思ってるってことか?」
「俺はそう睨んでる。この町に刀を持った奴はそういねぇ。いても役人か、他にいるとすりゃあゴロツキくれぇだ。そいつらは今やオアシスの従業員として俺の下で働いてっからその線は薄い。となると将軍家か三人の侍が怪しくなってくるだろ?」
「なるほど。でも町の人の中に人斬りがいる可能性も0じゃないんだよな?」
「あぁ。俺達は町の奴らに外に出るなと伝えた。だが今晩人斬りが現れねぇとなるとサクラ町の連中の中に犯人がいるっつーことになるな」
「そうか。なら、今日で最悪の場合でも人斬りがサクラ町民か城に住んでる奴らかのどちらかに絞られるってわけだな」
「そういうこった。まぁ俺の中ではほぼ城の奴らだとは思ってんだけどな。それにしてもリオンは理解が早くて助かるぜ。……シルキーを見てみろ、ポカンとしてんだろ」
そう言うとグレンはシルキーを指差す
シルキーに目をやると口を開けて宙を見ていた
これがポカンとするという事かと誰が見てもわかる程にポカンとしていた
それを見たルドルフはため息をつきながら頭を抱えていた
「よし!んじゃあ早速今晩に作戦決行だ!!」
「「「おぉーー!!!」」」
グレンの掛け声に俺達はそう返事をし、士気を高め人斬りが現れるという深夜になるのを待った――――
あ
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青 王(あおきんぐ)
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