第45話 失踪の謎
グレゴールがワープゲートに消えても尚、俺達は彼の最後の言葉に驚愕し固まっていた。そんな中グレンが我に返り、口を開いた。
「シルキーが危ねぇ……!」
「そうだ! 何であいつ、シルキーの事を知ってるんだ?」
「わかりません。でも地上人のあの男と何か関係がある……のでしょう」
「そんな事はどうだっていいだろう!? グレン! 早く私を浮かせてくれ! シルキーが心配だ!」
「わーってる! シルキーが心配なのは俺達も同じだ!」
そしてグレンのスキルで俺達はヨスガの里へと戻り、シルキーがいるオアシスへと急いだ。
◇
オアシスへと到着すると、俺はすぐにシルキーの部屋の扉を開けた。
「シルキー!! 無事か!?」
しかし部屋の中にはもう既にシルキーの姿は無く、一枚の置き手紙が残されていただけだった。
◆
―――― 『突然みんなの前からいなくなる事を許して下さい。そして、絶対に私を探しに来ないで下さい。みんなは今まで通り、平和なヨスガの里で幸せに生きて下さい。今まで本当にありがとう。さようなら。 シルキー』
◆
「ンだよこれ……!? 訳わかんねぇよ……シルキーテメェ……!!」
「シルキーの身に一体何があったというのだ……?」
「シルキーはどこに行ったのでしょうか……」
「シルキー……!」
手紙の内容に三人が各々の反応を見せる中、俺は部屋を飛び出し家の外へと出た。
すると三人も俺を追い、外へと出てきた。
「どうしたリオン?」
「手紙に『みんなはヨスガの里で――――』って書いていた。って事はつまり、シルキーはもう……このヨスガにはいないんだと思う。いるとすれば……多分上だ……」
「上……!?」
グレンの問いかけに俺は空を指差した。するとサナエは驚いた表情をした後、空を見上げた。
「なんでシルキーが突然いなくなったのかはわからない。でもここ最近のシルキーはどこか様子がおかしかった」
「確かに……。でも何でだ?」
「わからない……。ただ、俺が初めにシルキーの様子がおかしいと思ったのは、アンダーワールドの仮説をルドルフが立ててみんなで話していた時だ」
「言われてみればおかしいですね……。難しい話をしている時、普段のシルキーなら必ずと言っていい程、寝ているかポカンとした顔をしていたのに……」
「確かに……。あの時シルキーは起きていたな。あれには私も驚いた」
「あぁ。あん時は珍しい事もあんだなくらいに思ってたが……。そもそもあれが、シルキーがいなくなる予兆だったっつーことかよ……!!」
「何でその話をしてシルキーの様子が変わってしまったのかはわからない。でもシルキーが何らかの事件に巻き込まれている事は確かだと思う」
「グレゴールのあの言葉の意味も気になるしな……」
俺の推測とグレゴールの『シルキーはお元気ですか?』という言葉は、シルキーが失踪した謎を更に深めていった。
◇
「とにかく……! シルキーを探すなら上に行くしかねぇだろ!」
「そうだね兄さん。シルキーが何かに巻き込まれているなら助けてあげないと」
「シルキーが突然いなくなった理由と俺の故郷を潰した奴が何か繋がっているかもしれないしな」
グレンの言葉に俺とルドルフはそう返答した。
するとサナエが怪訝な表情を浮かべ、顎に手を当てながら口を開く。
「だがどうやって上へ行くんだ? グレンのスキルで浮いて、リオンのスキルで空に穴を開けて抜けるのか?」
「それは……最終手段な。さすがに空がどれだけ分厚いかもわからないし、確実に上まで穴を繋げられるかは保証できない。それに食いすぎて俺の汚物をヨスガの里に降らす事にもなりかねない……」
「うっ……。それは確かにまずいな」
「うん。リオンさんの汚物は僕もちょっと……」
「そんな事が起きれば、里の一大事だな……」
「お前ら……」
俺の言葉に次々と良くない反応を見せる三人。そんな三人に俺は少しの苛立ちを覚えた。
「じゃあ、他の道を探すしかねぇな」
「でもどこにあるのかな? 僕らもオアシスの仕事で里中の色んな所に行ったけど上に上がれる様な場所はなかったよね?」
「私も父の仕事について行って、奉行所や役所へも行ったがその様なものはなかったな」
「手掛かりは無し……か。他にないか? 何処か空に近い場所で探していない所は……?」
そして俺達は辺りをキョロキョロと見渡し空に近い場所を探す。すると全員の視線が一点に止まった。
「…………アレじゃないか?」
「アレだな……」
「アレしかねぇ……」
「アレですね……」
俺達の視線の先にあったもの。それは将軍がいた城だった。
「そうだよなぁ……。俺が初めてヨスガに来た時に一番初めに目に入ったでかい物だもんな」
「確かに城の中はオアシスの仕事では行ってないですね……」
「私もさすがに捕まった時以外は城の中に入った事はなかったな」
「くそーっ! こんな事なら城ん中に潜入した時、ちゃんと見とくんだったぜ……!」
「じゃあ早速、城の中に確認しに行こう」
「あぁ」
「そうだな」
「了解です」
そして俺達は上へ行く方法を探す為、城へと向かった。
◇
城へ到着するとダイモンの指示の下、着々と復興作業が行われていた。
「おぉ、ダイモン! ちょっと城ん中に入れてくれ!」
「なんだ、お前達か。ん? 今日はあの元気娘は一緒じゃないのか? それに何故、中に入る必要がある?」
「シルキーはその……少し野暮用で……。それより、城の中に忘れ物をしてしまって……」
「ん? そ、そうか。まぁいい。お前達なら入ってもいいぞ。作業の途中だから気を付けてな」
「ありがとう、ダイモン。里長、頑張れよ」
俺はダイモンにそう言い残し、俺達は城の中へと入った。
◇
暫くバラけて城の中を捜索すると、俺は将軍の部屋でとある物を見付けた。
俺は直ぐに三人を部屋に呼びソレを見せた。
「これを見てくれ……」
「何だァ? これは?」
「何かの模様……? にも見えますね……」
「これは将軍とヨシロウが下敷きになった天井の瓦礫か? というよりこんな物あったか……?」
「いや、無かったと思う。それにルドルフの言う通り何か描いてあるんだけど……何だろ?」
俺が見付けた物――――それは将軍の罠によって崩落した城の天井の瓦礫の中にあった石版だった。
それには何か変な渦巻き状の模様が人為的に描かれていた。
「ただの石版じゃねぇか。変な模様が書いてあるだけだろ?」
「いや、待って兄さん。将軍の罠のせいで色んな所が崩れてるのに、この瓦礫にだけこんな模様があって綺麗に残っているのはおかしいよ」
「確かにルドルフの言う通りだな。私もこれは何だか妙だと思う」
そして俺達は暫くその円を眺め、思案した。
「――――うん……? ここ、何か小さい穴があいてない?」
「あん? んー……まぁ確かに穴っって言われりゃあ、穴だな?」
俺はその円の中心に針が一本入る程の小さい穴を見付けた。
「何かこの小さい穴に入りそうな物………………って痛っ……!?」
俺がそう呟いているとグレンに突然髪を数本抜かれた。
「痛いな……!? 何するんだよグレン……!?」
「わりぃわりぃ! この部屋に針なんかねぇし、髪を束ねたら針みてぇになるんじゃねぇかと思ってな」
「だとしても俺の髪じゃなくていいだろ!?」
俺がそう怒っているのに対し、少し悪びれた様子で笑いながらグレンは俺の髪を束ねて針状にした。
「これをここに刺せばいいんだな?」
「何か怖いね……」
「なに、大丈夫だルドルフ。何かあれば私が守ってやる」
そして髪を抜かれた痛みから頭を押さえる俺と、何が起こるのかと怯えるルドルフ、それを守ると宣うサナエの三人を他所に、グレンはその小さな穴に俺の髪で作った針を勢い良く突き刺した。
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