第63話 石化を治す方法
一方その頃グレンは。
未だ石化したルドルフを抱え意気消沈していた。
「クソっ……! アイツら本当に行きやがった……。しかもリオンのやつ、思いっきり殴りやがって……」
グレンはリオンに殴られた頬を押さえ痛そうな表情を見せた。
その後、その手をルドルフの頭に戻し優しく撫でた。
「待ってろよ、ルドルフ……。兄ちゃんがぜってー元に戻してやるからな……」
そしてグレンはゆっくりとルドルフを家の陰へと運びその場に寝かせてやった。
「よし、ここなら何かの拍子に壊れたりとかもしねぇだろ。さてと……。どうすっかな。今更リオン達の後を追ってなんかする訳にもいかねぇし……」
するとそんなグレンの元へあの男が現れた。
「おぉ〜? ここの集落はまだ無事なようやな! ちょっくら話聞かせてもらおか」
その男とはハンス。
彼はリオン達と話し別れた後、別の集落を目指し歩き、グレンがいる集落へ辿り着いたのだった。
グレンはひとまずルドルフの傍に身を隠し、様子を伺い始めた。
「すんませーん! ちょっと話えぇですか? ……すんませーん!」
そう言うとハンスは集落の家を一軒ずつ訪ねて回った。
しかし集落の人々は先の一件があった事もあり、誰も外には出てこようとしなかった。
「えー? 何なんや? ここの人、全然話聞いてくれへん。もしかして何かあったんか?」
ハンスは独り言を呟きながら首を傾げ集落の中を歩き回った。
そして彼はグレンとルドルフがいる家の陰へと辿り着き、グレンより先に石化したルドルフに気が付いた。
「え……!? この集落は無事やなかったんか? 何でこの人だけ石化してんねん……?」
ハンスはそう言い石化したルドルフに触れようと手を伸ばした。
すると傍にいたグレンがその手を弾いた。
「い……った。アンタ何すんねん!?」
「何じゃねぇよ。テメェ何ださっきから? 俺の弟に勝手に触ってんじゃねぇよ」
「いや、まだ触ってへんやん。てか……弟?」
グレンはハンスを鋭い目付きで睨み付けた。
しかしハンスはそれに臆する事なく減らず口を叩き、そしてグレンが言った弟という言葉に引っかかったのかそう聞き返した。
するとグレンはゆっくりと口を開いた。
「あぁ。コイツは俺の弟なんだ……。俺は何とかしてコイツを元の姿に戻してやりてぇんだ」
「そうなんか。でも戻す言うたかて、そんな簡単な話とちゃうで?」
「やっぱそうなのか……。お前はこんなとこで何してんだ?」
「ワイ? ワイは化学者や。今は石化の治し方について調べとる」
「石化を治す……!? そんな方法あんのか!?」
ハンスが放った言葉にグレンは希望の光を見たかのように、目を輝かせそう聞き返した。
しかしハンスは目線を落とし申し訳なさそうに口を開いた。
「すまん、正直今はまだ……。ていうかこの先、見つかる保証もないねん……」
「んだよそれ……。期待しちまったじゃねぇかよ」
「あははっ……。それさっきも言われたわぁ」
グレンがそう言い肩を落とすと、ハンスはそれを見て少し笑った。
するとグレンはその様子に怪訝な表情を浮かべながらハンスに問い掛ける。
「あん……? 俺以外にも石化を戻す方法を探ってる奴がいんのか? 集落の奴らは一人が石化させられたらもれなく全員やられんだろ? 生き残りとかはいねぇはずだろ?」
「ワイもそう思っててんけどなぁ。ついさっき会うたんや。長い黒髪を後ろで結っとる少年と……あとボインの可愛い姉ちゃんに」
「おいその女……。自分の事、侍とか言ってなかったか?」
ハンスはそう言いながら先程出会ったリオンとサナエの事を思い返していた。
そしてグレンはすぐにその事に気が付いたのか、そう聞き返した。
「え……? 君、サナエちゃんの事知ってんの?」
「知ってるも何も、俺はそいつらと一緒にここへ来たんだ」
「えっ!? ほんなら君も他の階層から?」
「そうだ。俺もこの石化しちまったルドルフも、リオンとサナエもヨスガの里から来た。ある女を追っかけてな」
「ある女……?」
グレンの言葉にハンスは怪訝な表情を浮かべた。
「あぁ。シルキーっつー女だ。元々は俺達の仲間だったんだが、急に俺達の前から消えやがってな。探してここまで追っかけて来てみりゃあ、弟をその女のスキルで石に変えられてこのザマだ……」
「ふーん。やっぱりか」
「やっぱりだァ……?」
ハンスの反応に怪しむ様子を見せるグレン。
それを受けてハンスはその言葉の意味を説明し始める。
「この石化してる人らな、全員に針を刺した穴があいとるんや。これは外部からの毒物によるもんやとワイは思ってたんやけど……。まさか一人の女の子の仕業やったとは思わへんかったわ」
「そうか……。それで? この石化の治し方の糸口は掴めたかよ?」
「うーん。正直、不特定多数の人が一つの毒物を使って石化されてる方がまだ何とかなったかもしれへんなぁ」
「あぁ!? どういう意味だそりゃあ!?」
ハンスは浮かない表情で自らの見解を述べた。
するとグレンは声を荒らげて聞き返した。
「どういう意味って。君もスキルは持ってんねやろ? それやったらわかるやろ。スキルによる効果は、その効果を打ち消す事が出来るスキルでしか消す事は不可能や。簡単に言うたら火のスキルに水のスキルみたいな感じやな」
「チッ……。やっぱそうなのかよ」
ハンスはスキルについての説明を交えグレンに返答した。
グレンはその事実に落胆し、悔しそうな表情を見せた。
「まぁそれともう一つ、スキルの効果を消す方法はあるっちゃあるけど……」
「……何だその方法って!?」
そんなグレンに対しハンスはもう一つの方法を仄めかした。
しかしハンスのその表情からはあまり得策ではない事が窺えた。
「あんまりオススメしたくないねんけどなぁ……」
「勿体ぶらずにさっさと言えよ!」
「うわっ、いきなり大っきい声出さんといてぇな! びっくりするやんかもう……!」
「あ、あぁ。悪ぃな。で? その方法って何だよ?」
グレンが声のトーンを下げてもう一度問うと、ハンスは浮かない表情のままゆっくりと口を開いた。
「スキルの効果を打ち消すもう一つの方法は……。そのスキルの使用者を殺す事や……」
「は、はぁ……?」
ハンスが放ったとんでもない言葉にグレンは言葉を失った。
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