一章クライマックス突入!
第23話 サナエ奪還作戦
マサムネの誘導と俺のスキルで城の中の物置部屋へと侵入した俺達は、ここでマサムネの立てた作戦を聞くことになった。
「いいかお主らよう聞くのじゃぞ。ここは一階の最奥に位置する部屋じゃ。最上階の天守閣に将軍ヨシユキはおるじゃろう。その下の階には三つの部屋がある。その三つの部屋はサナエが捕えられているであろう一つの隠し部屋に繋がっておる。各部屋には一人ずつ将軍の侍がおり、それらを倒すかやり過ごし、奥の隠し部屋に進むしかワシらがサナエを救う手立ては無い」
「やっやこしい構造してんなぁ!? とにかく三つの部屋のどれからでも奥の部屋にたどり着きゃあいいんだな!?」
「そうじゃ」
グレンは頭を掻きながらマサムネに再度確認をとり、彼もそれに頷いた。
「では全員で一つの部屋に入って一人の侍と戦えば他の二人とは戦わずに済みますね」
「いや、それはダメじゃ。他の二つの部屋もサナエがおる隠し部屋に繋がっとると言ったじゃろう? 隣の部屋の騒ぎに気付いた二人が隠し部屋で待ち構えておったら一度に二人を相手にせんにゃならんくなる。侍二人を一度に相手にするのは現役の頃のワシでも、ちと骨が折れる」
確かにルドルフの提案は合理的で良いものだった。しかし、マサムネの言うようにその危険性も十分に考えられる。
「じゃあやっぱり三手に分かれて各部屋に入るのが無難って事だな……」
「しかし、そうなると誰か一人が侍のいる部屋に単独で入ることになりますね……。それは一体誰が――――」
ここにいる全員を三つの班に分けると、どうしても一人溢れてしまう。誰がその一人になるか決めあぐねていると、グレンが徐に口を開いた。
「俺が一人で行く。俺はオアシスのリーダーだ。ここは俺が一発気張る所だろ……!」
俺達はグレンの男気に心の中で拍手した。彼の提案に異を唱える者は誰もいなかった。
「じゃあ残りの割り振りはどうする?」
「こういう時はくじで決めよーよー!」
俺の問い掛けにシルキーが何やら紙に印を書いた物を手に握り、目の前に出してきた。
「テメェ、話も聞かずに何かしてると思ったらこんな物を作ってやがったのか……」
グレンがそう言うとシルキーは何故か得意気に笑ってみせた。
「ふふん。この紙の先端には印が書いてあるんだよー! 同じ印が出た人が同じ部屋に入るってことねー!」
「うん、そのくらいわかってるよ……?」
シルキーの説明にルドルフはため息混じりに答えた。
そしてグレン以外の全員でそのくじを一斉に引いた。
「俺とシルキー、ルドルフとマサムネって事でいいんだな?」
「そーだよー! 私達よく一緒になるねーリオっちー!」
俺はなんとなく愛想笑いをし、それをやり過ごした。
「ほっほっほっ。ルドルフよろしく頼むよ」
「精一杯頑張ります!よろしくお願いします」
二人は中々相性が良さそうだ。
そう思っているとマサムネが口を開き、この城について詳しい説明を始めた。
「まずさっきも言った通りじゃがここは一階じゃ。侍のおる部屋に行くには四階まで上がる必要があるんじゃ。じゃが城の中には何人もの役人がおる。但し、そやつらは別にお主らに悪意があるわけじゃあない。将軍の命に従っとるだけじゃからの。じゃから誰も殺すな! 己の正義の為に悪意なき者まで殺す必要はないからのう」
「そうだな。俺達に悪意がない人を殺しちゃったら、それはもう人斬りと何ら変わらないからな」
マサムネの話を受け、俺がそう言うと全員が強く頷いた。
「テメェら、ぜってぇ誰も死ぬなよ!」
「当たり前だ! 誰も死なずにサナエを助け出して帰ろう!」
「そうだね。みんな無事に家に帰ろう!」
「みんなで将軍にお仕置するんだよー!」
最後にグレンが一言添えると、俺達はそれに威勢よく答えた。
そして全員が覚悟を決めたところで、マサムネが物置部屋の扉を開けた。
俺達は一斉に戦闘態勢に入った――――のだが。
…。
……。
………。
…………。
部屋の外には誰もいなかった。
「誰もいねぇじゃねぇか!!」
「ほっほっほっ。当たり前じゃろ。一階は外に門番がおるし侵入者が入ってこん限りそうそう一階に役人は集まってこんわい」
グレンが大声で叫ぶと、マサムネは笑いながらさも当然かのように、そう説明した。
すると――――バタバタバタバタッ……! と足音のようなものが上の階から聞こえてきた。
「ねー。なんか凄いドタバタと足音が聞こえるんだけどー?」
シルキーが上の階から無数の足音が下に降りてくるのに気が付いた。
「確かに。変じゃのう? ワシらの侵入にはまだ気付いとらんはずなんじゃが……」
マサムネがそう言うと上の階から何十人もの役人が一斉に下りてきた。
「侵入者だーー!!!」
「侵入者をとらえろー!!!」
「城門を突破されたぞー!!」
「であえであえー!!」
さっきまで誰もいなかった一階に役人達がわんさか押し寄せてきた。
「もしかして気付かれたか……?」
「兄さんが大きい声を出すからだよ」
息をのみ外の様子を伺うグレンに、ルドルフがチクリと小言を言った。
「いや……違うみたいだな」
俺がそう言うと二人は役人達の動きを見た。
「誰も俺達の方を見ねぇ……?」
「階段の影に隠れて、あちらから見ると死角になっているのかな?」
グレンとルドルフが呆気にとられていると、何人もの男の怒号と共に城の入口の扉が破壊された。
「「「「うぉりゃあああ!!!!」」」」
そして少し綺麗な服を着た、いかつい顔の男達が、城の中へとなだれ込んできた。
それを見たグレンとルドルフとシルキーは驚いた様子だった。
「あ、アイツら……」
グレンがそう呟く。
そして俺は男達の方に目をやった。
男達は役人達を押さえつけて何やら叫んでいた。
「グレンさんを返せー!!!」
「ルドルフさんがいなけりゃ俺らなんも出来ないんすよ!!!」
「シルキー姉さんが俺の癒しなんだあああ!!」
よくわからないが、どうやら侵入してきた男達はオアシスのメンバーのようだ。
「あのバカ共……。俺達が捕まったと思ってこの城に乗り込んで来やがったのか……!」
「誰もこんな指示出してないのにね、兄さん……」
「ほんとバカだよねーみんな……」
三人の迷惑そうな口ぶりとは裏腹に、表情や声色はとても嬉しそうに見えた。
「ありゃあ、お主らの仲間か?」
「そうだ。あれがウチのバカな仲間達だ!」
「ほっほっほっ。そうかい。じゃあそのバカ共に役人達を任せて、ワシらは先に進むかのう」
「「「「おう!!!!」」」」
俺達は無数の役人の相手をオアシスのメンバーに任せ上の階を目指し物置部屋から出て走り出した。
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