第22話 もう一つの道


 

 マサムネから将軍一族の話を聞き、何故たった数十年の間にヨスガの里がこんなにも変わってしまったのか知ることが出来た。

 

 それと同時に将軍一族をと言うよりも、現将軍ヨシユキとその息子、恐らく人斬りであるヨシロウを許せないという気持ちと、サナエを必ず助け出すという意志が更に強まった。

 そしてマサムネは俺達を自分の家の裏へと連れてきた。


 

「城へ向かう道は皆が知っとるようにサクラ町の表通りから城へ入る一つしかない。じゃが、お主らは表から入るなぞ今は到底無理じゃろう。そこでじゃ。ワシらはここから城の中に入る」


 そう言いながらマサムネは、何も無い土壁を指さした。

 

「なるほど。ヨシツグが城から掘った抜け道だな……?」

 

「ほっほっほ! よくワシの話を聞いておったようじゃのう」

 

 そしてマサムネは家の裏にある土壁を刀の先でひょいっと斬った。

 すると壁は音を立てて崩れ落ちた――――が、マサムネはそれを見て不思議そうな顔をしていた。


「あら、おかしいのう……? ここにこの間までヨシツグが掘った穴が開いておったのじゃがのう……」

 

「おいおい、じいさん。ボケてんのか? じゃあこれからどうすんだよ……?」

 

「ほっほっほっ。まぁそう慌てるでない。お主らの中にこの状況を打開できる奴がおるじゃろう?」

 

「まさか……」

 

 マサムネは笑っていた。

 それに対し、グレン、ルドルフ、シルキーの三人はポカンとしていた。

 

 しかし、俺はマサムネの考えが何となくわかってしまった。

 なぜなら俺は壁に穴を掘った事があるからだ。

 それに俺のスキルを使えば土を捕食しながら進める。

 

「はぁ……。わかったよ。サナエを救う為だもんな」


 俺はそう言い両手を口に変えると、土を捕食し壁に穴を開けた。

 そして俺が壁の中を掘り、後ろに四人が着いてくる形で穴の中を進んだ。

 しかしこの時俺は自分のスキルの制限を忘れていた。



 ◇



 暫くしてその制限は俺に牙をむいた。


 

「うっぷ……」

 

「あれー? どうしたのー? リオっちー? 何だがペースが落ちてきてるよー?」

 

「ペースが落ちる? ……っておい! テメェまさか!」


 シルキーが俺にそう言い、グレンが何かに気付いた。

 

 ――そう、俺のスキルの制限。

 胃袋の限界だった。

 でもみんなが通る道に俺の汚物を撒き散らすわけにはいかない。

 必死に耐えながら穴を掘り進める。

 


「リオンてめぇ! 絶対吐くなよ!? わかってんな!?」

 

「え!? 吐く!? リオンさん! 吐くのはやめてください!」

 

「リオっち! これほんと冗談とかじゃないからね!? ほんとにだめだからね!!!」

 

「う、うっ。わ、わかってる……うっ!」


 

「おええええええ……」


 ――やってしまった。

 

「ぎゃああああ!!!!」

 

 シルキーが悲鳴をあげた。


 ――本当に申し訳ないです。

 

「リオン! てめぇ! 吐くなつっただろうが!!!!」

 

 グレンが怒鳴っている。


 ―――だってしょうがなかったんだもん。

 

「次からはこの作戦はなしの方向で考えた方が良さそうですね……」

 

 ルドルフは俺の汚物を上手くかわしながら冷静に判断してくれている。

 と思いきや、銃口を思いっきり俺の方に向け引き金に指をかけていた。

 

「ルドルフ! マジでごめん! みんなもほんとごめん! 次から……うっ気をつける……からっ……! おぇぇ……」


「おま、マジ殺す……!」

 

 グレンがキレた。

 シルキーは必死にそんなグレンを止めてくれている。


 ――シルキーには感謝しよう。


 しかし、ルドルフはとうとう我慢の限界だったのだろう。

 躊躇いもなしに引き金を引いた。


 バンッ!


 すると目の前の土に穴が開き光が差し込んだ。


 ――あぁ、出口のすぐ手前だったのか。

 だが、もう少し耐えてればこんな事には……。

 


 そうこうしていると最後尾にいたマサムネが前に出た。

 そして俺達は続々と穴から部屋の中へ入った。

 


「ほっほっほ。到着じゃ。ここはもう城の中。物置部屋じゃ!」

 

 しかし三人は穴から出るや否や俺を囲んで責め始めた。

 

「てめぇ! 吐くなってあれ程言ったよなあ!? きったねぇ汚物の上を歩かなきゃなんねぇ俺達の気持ちをもっと考えろよ! ばかが!」

 

 グレンはめちゃくちゃ怒っていた。

 

「ほんとだよー! 私の靴の裏もぐちょぐちょだよー。今度新しいの買ってよねー」

 

 シルキーも珍しく怒っていた。

 

「僕は撃った事……後悔してませんから」

 

 ルドルフが一番怒っていた。

 

「でも俺がいなけりゃここまで来れなかったじゃないか! ちょっとは感謝してくれてもいいだろ!?」

 

 俺は三人に言い返した。

 

 しかし――――

 

「お前がいなけりゃそもそもこんな汚物まみれになってねぇんだよ!!」

 

 グレンがそう言うとシルキーは「うんうん!」と頷いていた。

 

「明日から胃袋の容量を広げる特訓をして下さい。一人で」

 

 ルドルフは怒りを通り越したのか清々しい程の笑顔でそう言い、また俺に銃口を向けてきた。

 するとそれを見てグレンとシルキーは笑い出した。

 

「ブッ! コイツめちゃくちゃキレてんじゃねぇか! あははは!」

 

「ほんと! こんなルドルフ初めて見たよー! アハハハ!」

 

 銃口を既に二回も向けられている俺は笑い事ではないのだが。

 ルドルフは俺がわかったと言うまでこうしているつもりだろうか。

 

「わ、わかったよルドルフ。言う通りにするから許してくれよ…」

 

 俺がそう言うとルドルフは銃をしまった。

 そして俺達は我に返りマサムネの方を向いた。

 

 するとマサムネは腕を組み仁王立ちでこちらを睨みつけていた。

 

「おいこらガキ共……。ここはもう城の中じゃというておろうが……。サナエを助ける気がないのならここで全員叩き斬ってやってもよいのじゃぞ?」

 

 そう言うマサムネからは有り得ないほどの殺気が迸っていた。

 


(やべぇーーこのジジィめっちゃキレてるじゃねぇか!)

 

(このおじいさんめちゃくちゃこわこわーな感じだよー……)

 

(僕より怒っていらっしゃる……。やはりリオンさんの汚物のせいだろうか?)

 

 ――おいおい、本気で俺達を殺しかねないぞ……?

 


 そして全員深く頭を下げ謝罪した。

 

 するとマサムネは機嫌を直して、この城の構造と作戦を説明し始めた。

 

 

 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ここまで読んで頂きありがとうございます!!


次回からはいよいよ敵の本陣、城の内部へと潜入していきます!


ここで一区切りと☆評価やレビュー等を頂けると、筆者はとても喜びます!!

モチベーションも、ぐーーんと上がり執筆頑張れます( ˙-˙ )౨



よろしくお願いしますm(_ _)m

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