第78話 相容れない二人
シルキーから飛び出したまさかの言葉。
俺とグレンは固まっていた。
そしてハンスは以前からシルキーの目的を知っていた様な口ぶりだった。
「シルキーがヴァイツェンを殺す……? どういう意味だ……? テメェら親子は仲間なんじゃねぇのかよ?」
「俺もそう思ってた。けど違うんだよな? シルキー?」
俺とグレンがそう問掛けると、シルキーはこくりと頷いた。
しかしシルキーはそんな事には一切構わず、ヴァイツェンにバレないようにする為に、俺達への攻撃の手は緩めない。
「私はお父さんの事を止めたいの。でも何をしてもお父さんのスキルの前では無力だった。だから私は計画を立てた。従っているフリをして時を待った。……それなのにグレン達はここへ来た。もう少しだったのに……」
「なら俺達と一緒にヴァイツェンを倒せばよかったじゃねーか!? なんで全部一人でやろうとすんだよ!?」
「そうだよシルキー! 俺達仲間だろ!? もっと俺達の事を頼ってくれてもいいじゃんか!」
「頼れるわけ、ないよ……」
「「え……?」」
シルキーは消え入りそうな声でそう呟いた。
その時、俺とグレンはその言葉の意味を理解する事は出来なかった。
「私はグレンとルドルフが大事だから、二人を守る為にヨスガの里へ逃がした。でも二人がここへ来た事でお父さんは私の裏切りを疑った。だから私はルドルフを石に変えた。私がお父さんの事を裏切っていないと証明する為に」
「そんな事の為にルドルフは石にされちまったって言うのかよ……? シルキー、テメェふざけんなよ……!?」
「他に方法があったんじゃないのか? 何でそこまでする必要があったんだ?」
「お父さんは疑り深い。だからああするしかなかった」
「テメェの目的の為なら仲間や家族を犠牲にしたって良いって言うのか!?」
「……仕方ないと思ってる」
「何だとテメェ!!!」
「ちょい待ち、ちょい待ち!! まーた話が変な方向に向かっとる! グレンちゃんも少しは落ち着け! シルキーは早う計画の内容を伝えたらどうや!?」
グレンがシルキーの言葉を聞き熱くなったところでハンスが戦闘に加わるテイで話に割って入った。
しかしシルキーは首を小さく横に振った。
「それはダメ。二人に私の計画を話すわけにはいかない」
「どうして……!? 俺とグレンはシルキーの味方なんだぞ?」
「言えない。グレンとリオン――そしてきっとサナエも私の計画に反対するから」
「俺達が反対する様な計画だって事じゃねーか!! だったら尚更テメェを生かしておく訳にはいかねーよ!」
「グレンちゃん落ち着きって!」
「あんた達がお父さんをどうしようが私には関係ない。好きにすればいい。殺してくれるなら私は手放しで喜ぶわ。だからもうこれが最後……。お願いだから私の計画の邪魔だけはしないで」
そう言うとシルキーは俺達の元を離れヴァイツェンの側まで戻って行った。
「今のどういう意味だったんだ……? 最後って?」
「そのまんまの意味だろうよ。アイツは自分の邪魔をすれば俺達を殺すって、そう言ったんだよ!」
「あーもう、ちゃうねん!! 人間関係ってほんまめんどくさいわ」
俺の疑問にグレンは冷たく、そして怒りながら答えを示した。
そしてハンスは珍しく声を荒らげ心情を吐露した。
「どうしたハンス? 違うって何が違うんだ?」
「もうえぇ。シルキーが言うなって言うた事はワイも言うつもりはない。でもなぁ、自分ら同じ目的を持っとるはずやのに言葉が足らな過ぎやねん。やからめんどくさいっちゅうてんねん」
「それはアイツがちゃんと話をしねーからだろうが。俺達が知った事かよ!」
「グレンちゃんはそうやってすぐ怒るやろ? やからもうえぇって。ワイらとシルキーの目的は同じやねんから、ワイらがヴァイツェンを攻撃してもシルキーはもはやこっちに危害を加える気はないし、せやからワイらはさっき言うた作戦を実行する事だけ考えといたらえぇ」
「俺達がヴァイツェンを攻撃したり殺したりするのはシルキーにとっても好都合だからか?」
「せや。シルキーは何らかの方法でヴァイツェンを殺ろうとしてるはずやからワイらはソレの邪魔をせんように作戦を実行する。えぇな?」
ハンスの言葉にグレンは何か思う所はあっただろうが、それを飲み込み黙って頷いた。
「ほんならいくで。まずはリオンちゃん、頼むで」
ハンスはそう言うと、火、水、雷、土、風、氷属性の玉を発現させた。
そして俺はそれらを全て手の口で捕食した。
「よっしゃ、ほんならグレンちゃん。いくで?」
「あぁ、任せろ……」
二人は顔を見合わせると一斉にヴァイツェンの元へと向かって行った。
そしていよいよ俺達の戦いは最終局面へと移行する。
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