第6話 12月4日(日)~

 どのくらいそうしていただろう。

 僕はただ池に浮かぶ死体を眺めていた。

 覚えていないけど、笑っていたかもしれない。

 だって嬉しかったから。

(コレは僕の世界、コレは僕の世界)

「コレは僕の世界」

 ニタッと笑って思わず声に出した。

 氷が溶け出して、女性の遺体がユラリと水面で揺れた。

 朝日を浴びて金色の細い髪が水面に揺れる。

 キレイだと思った。

 不気味さを感じないのは、この視界に映る世界のすべてが幻想的に映っていたから、その中心に在るのは、池で揺れる遺体。

 池の氷が完全に溶けるまで僕は、その場を動けずにいた、目を放したら現実に戻されそうで、それがなにより怖かった。

 時間は無情に流れて、僕を徐々に現実に戻していく。

(当然だよな)

 僕は家に帰って、両親に池の遺体のことを話し、慌てた父親が警察へ通報してしまった。

 残念だけど、僕の妄想は終わりを告げ、現実に置き換えられた。


 それからはツマラナイ日が数日続いた。

 警察で遺体発見までの経緯を話して、雑誌やら新聞やらの記者が数人話を聞きに来て、学校で一時の話題の中心にいただけ。


 2週間もすると、またツマラナイ日常へ戻された。

 怖かったのは、この喪失感。

 解っていたんだ、ドキドキはいつまでも続かない。

 なんにでも慣れていくんだ、僕も他人も。


 だから時を止めれたらいいと思った。

 あの時感じた高揚感をいつまでも…いつまでも…。


 願うことが罪ならば、僕は罪人だ。


 空は青く…雪景色は、どこまでも白く、教室の窓から見える景色は、腹が立つくらいに当たり前で…。


 だから僕は願わずにいられなかった。

『壊れてよ…』




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