第130話 ANOTHER
まずは服だ、この体に、この服はちょっとね。
今にも裂けそうな服、どうにかしないと。
これが最初から解っていれば、服くらい父親のを持ってきたのに…。
自分の容姿が確認できないのは不安だな。
(燃やさなければ、服や鏡くらいあったのかもな)
まぁ今さら考えてもしょうがない。
僅かばかりの金は持っているけど、この恰好で店には入れない、警察や病院に保護ってのも身元が割れてしまう。
定石通り盗むしかないか…。
なんだか異世界を旅するRPGの主人公のようだ、知っているけど知らない街を歩く。
装備品は貧弱で、お金も無い。
僕はいつも、一番安い武器でしばらく頑張ることにしている。
ひたすら最初の街の周りで雑魚を狩る。
基本武器はダンジョンで拾える、防具も道具も拾える。
なんのためにお金を貯めるのか?
僕も良く解らない、最終的には余りまくるのは解っているのに…。
ただ減ることが嫌なだけかもしれない。
自分のナニカを失うことを嫌がる、そのくせ、道具欄が埋まってくると全部売り払ってしまう。
矛盾している。
シンプルが良い、いつか使うかも?いつかは訪れないものだ。
大事に持っていても、役に立たないのであれば不要だ。
使い時が解らないままエンディングを迎えるって、よくあることだ。
神社は、朽ちていく一方なんだな…。
とりあえず神社の敷地を歩いて回る。
懐かしいとは思えないものだな。
先ほど出て来たばかりで当然だが、時は流れている。
実感できる。
時間は数字で表すが、決して平等ではない…感覚で感じるものなのだと、今なら解る。
アインシュタインが、この魔境を歩いたら相対性理論を発表できただろうか?
ふとそんなことを思った。
待てばいい…それが長いか短いかなんて僕次第だ。
誰か来たら、服と金を奪おう。
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