第54話 12月30日(金)
「パソコンありがとう」
翌朝、パソコンを母親に返した。
もちろん調べていた検索履歴は消去して途中途中で、開っきぱなしにしていたアニメやらゲームやらの履歴だけを残して。
「敦…神社の鍵はまだお前が持っているのか?」
唐突に父親が聞いてきた。
一瞬、ギクッとして身体が硬直した。
「持ってるよ、僕が当番だから…」
「そうか…次の当番は誰だ?」
「澤田くんだけど…しばらくは僕が持っているよ」
「そうか…」
父親はTVで朝の報道番組を観たまま、一度も僕の方を振り返らないまま、再び食事を始めた。
味噌汁をズズッと吸う音がイライラさせる。
無言のまま、僕は朝ごはんを胃に押し込むように食べて部屋へ戻った。
机の引き出しに閉まってある神社の鍵を確認する。
冬休みに入る前、僕は嘘を吐いた。
神主さんに電話して、お祭りのときに使う子供会の道具を境内の倉庫に片づけたい。
鍵を借りたいと…鍵は管理人に渡してある、連絡しておくから借りてくれと、簡単に借りれた。
その後、母親に学校で神社に閉まってある道具を自分達で管理することになったからすでに借りてある合鍵を作ってほしいと頼んだ。
6年生が持ち回りの各クラス当番制で管理すると…。
なぜ僕が?
神社のある地区、そこの子供会副会長だから。
母親は合鍵を作り、僕は管理人に閉まったのでと鍵を返した。
この冬休みさえ乗り切ればいい嘘。
空ける頃には…両親は居なくなっているのだから。
持ち回りの当番制…説得力はあったか?
『サクライ』の次は『サワダ』
名簿順だ。
嘘には真実と事実を混ぜること、それが嘘の有効期限を延ばすんだ。
気になるのは…父はなぜ鍵のことを知っている。
母が話したか…あるいは、あそこに入ったのか?
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