第53話 12月29日(木)2

「母さん、パソコン借りていい?」

「いいけど」

「ありがとう」

「あっ宿題、パソコンで調べちゃダメよ」

「しないよ、そんなこと」

「そうよね、敦はそういうことしない子よね」


 母親からノートパソコンを借りた。

 調べるのは宿題?そんなことどうでもいい。

 調べるのは『鏡』と『魂』だ。


 物質的な質量を持ったまま肉体から分離される『魂』

 そして、質量を持たない思念だけを分離した状態での『魂』

 エーテル体…アストラル体…そんな眉唾な状態があるのか…?

 その状態を誰が何と呼ぼうと関係ないのだが、どうしても知りたいことがある。

『魔鏡』と『分け身』

 一般的な魔鏡とは意味が異なる、反射して壁に文字を浮かび上がらせる程度のモノではない。

 絵巻と一緒に保管されていた書物。

 完全には読めないが、『鏡・映・移・解れ…』ところどころの漢字は解る。

 知識が無いのが恨めしい…完全に読むことが出来たなら…冬休みの課題に自由研究はない。

 夏休みなら神社の歴史をとか理由を付けて、子供らしく調べることも出来たかもしれない。

 到底、今の僕に読める代物ではない…読むには専門的な知識がいる。

 だが無視するわけにもいかない。

 実際に何が起きたのか知る必要がある。

 アリスが何なのか?どういう状況なのか?それは後でいい。

 今、必要なのは…魔鏡の発動条件がコントロールできるのか?

 魔鏡に撮りこまれたものがどうなるのか?どうなったのか?


 発動条件を操る術があるから…魔鏡を隠したんだ。

 屈折率が歪められるから池を造ったんだ。

 つまり破壊はできない、アリスと同じなんだ魔鏡も。

 発動を制限するのが限界だった…そう思える。

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