第39話 ファーザーズ

「失踪事件の件じゃないのか?」

「失踪?誰の?」

「澤田さんの息子、失踪したんだろ?」

「あぁ、ソッチは地元の警察が動いてます」

「地元?アンタは?」

「私は本庁の…刑事でして」

 相良が胸ポケットから名刺を差し出す。

「本庁の…刑事」

「えぇ」

「で?何の件で?」

「神社のことで知っていることを」

「そうだったな…」

「そのつもりだったんですが…聞かせてください、なぜ澤田さんの息子が失踪だと?」

「違うのかい」

「まだ断定はしてません、あのくらいの子供が家出することは珍しいことでもないですし、まだ事件性が濃厚という段階ではないでしょうな」

「そうか…」

「なぜ失踪だと?神社と関係あるんじゃないですか?池とかかな?」

「神社が建った由来は?」

「おおまかに」

「池が出来る前に、あの場所に星が落ちたんだそうだ、隕石なのか解らんが」

「隕石?」

「そこに行くと、もう一人の自分が見えることがあるという噂が立って…そのうちの何人かは倒れるように眠ってしまう、そのまま目を覚まさない、それで、その穴を埋めたんだそうだ」

「その後に池を作って土地ごと水の下にしたと…」

「あぁ…そんな話を親父から聞いたことがある。そのくらいだ知っているのは」

「もう一人の自分と言いましたね」

「あぁ…鏡に太陽を反射させたような眩い光を時折発したと伝えられているそうだ」

「だから入鏡…」

「その光の中に、もう1人の自分を見るんだそうだ」

「鏡…か…」

「そう思えたんだろうな」

「息子さんもその話を知っているんですか?」

「さぁ?俺は話したことはない…が、親父は、アイツの爺さんは、話したかもな」

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