第38話 ミスリード

「なんでしょうか?」

 花田に話しているようだが、崇の目は相良に向けられている。

「実は、あなたが神社の歴史に詳しいと聞きまして、あの神社のお話を伺いたくお邪魔したしだいで」

「神社?天見あまみ神社のことですか?」

「そうです、入鏡池のことも」

「池…」

 相良が物珍しそうに工具を眺めながら、店の入り口から口を挟む。

「えぇ…神社の云われとか、池について知っていることなんか話して頂ければと思いましてね、息子さんのほうは言いたく無さそうなもので…」

「相良警部補!!」

 花田が相良を睨む。

「俺も大して知っているわけじゃない」

「も?…息子さんも、何か知っているということですね」

「さぁ…アレとは、ほとんど話さないから」

「アレとは敦くんですね」

「あぁ…まぁ知っていることで良ければいいですよ」

 そう言うと、花田の脇をスッとすり抜け相良に椅子に腰かけるように促す。

 椅子と言っても、オイルの完に座布団を縛り付けただけのものだ。

 スッと灰皿を差し出す崇。

「なぜ…タバコを吸うと?」

 相良が崇に尋ねた。

「ん?唇…しきりに指で触っていたから我慢してんだろうなと思っただけだ」

「なるほど」

「知っている事は、そんなにない。俺の親父が当時の神主と仲が良かっただけだ」

「当時の?今は神主が違う?」

「あぁ…会ったことはないが…まぁ名ばかりだから神社に来ることもないだろうし」

「変わった言い伝えとか聞いたことありませんか?」

「言い伝え…さぁ…アンタ、あの事件で来たわけじゃないのか?」

「あの事件?」


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