第37話 コンダクター

「相良警部補、行きますよ」

「はいはい…どこへ?」

「桜井さん、あっお父さんのほう、崇さんですね、今日、話聞きに行くんでしょ」

「う~ん…どっちがいいかな~と思ってね」

「どっち?」

「いや、小学生の行方知れずとさ、どっちに行くのが正解なのかなと思っててね」

「関係あるんですか?」

「無いと断言する根拠もないが…あると言い切る自信もないんだね~実は…」

「行きますよ」

「どっちに?」

「桜井崇さんのほうです」

「ソッチか~なんで?」

「私、予定がコロコロ変わるの嫌いなんです」

「花田巡査…警察は臨機応変に、柔軟性も大切だよ」

「私、生活安全課ですから」

 無い胸を張る花田。

(生活安全課だから…なんなんだろう?)

 相良は、それ以上、掘り下げないことにした。

 タバコを咥えると

「まぁ、行こうか」

「ハイ…と、禁煙です」


『桜井モーターズ』手書きの看板が掲げられた木造2階建ての住居兼店舗。

 御世辞にも儲かっているようには見えない。

 1階の半分は店舗として利用している、オイルに塗れたコンクリートむき出しの床に革靴の底がペトッと張り付いてくる。

「すいません、警察の者ですがー、桜井さん御在宅ですかー」

 店舗だというのに、誰も店に居ないという開けっ放しのヤル気の無さ。

 相良はゴチャゴチャと道具が放置された店を見回す。

(盗まれないのかな?ゴムノリとか…中毒者に盗まれそう、生活安全課こういう指導はしないのか?)

 花田がズケズケと奥に進む。

(しなそうだな~、この子は…)


「はい?」

 奥からツナギを着た無精ひげの中年がノソッと出てきた。

「警察の者です」

「息子なら今…」

「いえ…今日は、アナタにお話を伺いたく」

「俺に?」

 桜井崇はチラっと相良に視線を移して、フーッと息を吐いた、面倒くさそうに。

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