第126話 議事録

「オマエはいつまで経っても銃を組み立てられないんだな、花田」

「以外と難しいんですよね」

「女は模型とか作らんからかな?」

「そういうの差別的発言って言うんですよ」

「デカの世界に男も女もないの、シリンダー洗ったら、お茶淹れてね」

「はい」

(あるじゃないか男尊女卑…)


 結局、刑事課に配属されても、現場に行けることは、ほとんどなく、基本的に事務のOLような扱い、コピー、電話番、お茶くみ…雑用ばっかである。

 刑事になって数か月、田舎町で事件など、そうそう起こるわけもなく、かといって何も無いわけでもなく…やりたいことなんて、できないという現実と組織という圧力を感じ始めていた花田にメールが届いた。

「やりたいことができないだろう?」

 相良からだった。

 まるで見ているかのようなメール、相変わらず憎たらしいというかなんというか…。

 見透かされているようで恥ずかしい。

「べつに腐ってません」

 返信して2日

「諦めるの?それが賢い判断だ」

 花田はメールを開いて、思わず唇の内側を噛んだ。

(馬鹿にして…)

 花田はデスクを立って、トイレで泣いた。

 悔しくて…諦めかけていた自分が恥ずかしくて…。

 相良のことは聞いていた、資料整理に回されたと。

 現場から外され、情報を遮断され、それでも相良は組織に抗い続けている、そんな気がした。

 短い文面から相良のソレが伝わってくるようで…キミは動けるだろう?

 そう言われているような気がした。

 消灯したままの夜の女子トイレ個室で泣いた…声を殺して泣いた。


「おはようございます」

 翌朝、花田の背筋は伸びていた。

(やるぞ…桜井敦、このまま逃げれたと思うなよ)


 署内では、女子トイレの怪談が囁かれ始めていた…。

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