第85話 メロディ

(だから交通課をクビになるんだよ…)

 花田の運転の荒さに少し乗り物酔いした相良。

 時折オエッとなりながら、桜井家を訪ねる。

 相変わらずの手書きの看板、客がいない店。

「今日は敦くんを?」

「そうだね」

「なにをするつもりですか?」

「違法捜査かな」

「始末書ですかね…」

「ソレで済めばいいけどな~バレたら懲戒もあり得るかもな~」

「えー、私困ります…」

「だから、知らなかったことにしておくよ、キミはさ、母親と話してればいいんだよ、俺は敦の部屋に入るからさ」

「そんな上手くいきますか?」

「いくと思ってるんだよな~」

 相良の思惑は、父親は敦の部屋を調べることに反対はしないと踏んでいる。


「じゃあ頼むよ…母親の方は」

「はい…気を付けてくださいね、私のためにも」

「はいはいっと…」

 フラッと店に向かう相良の後姿に不安を感じずにはいられないのであった。

(大丈夫だろうか…警察官って潰しが効かなそう…懲戒された警官なんて雇ってくれるトコないだろうなー)


「あ~すいません」

「アンタか…今日は?」

「う~ん、言い難いことなんですがね…お願いに伺いまして」

「……息子のことか?」

「えぇ…察してましたか」

「まぁ…な、今日は留守だがね」

「知ってます、確認してます、だからお願いに来たんですが」

「なんだ?」

「部屋を確認したいんです」

「息子のか…」

 灰皿を差し出して、相良に座るように促す崇。

「どうも」

 ペール缶に腰かけてタバコに火を付ける。

「日記か?」

「それと…神社から持ち出しているナニカ」

「ナニカか…話そうか、そのナニカを」

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