第75話 マインド
相良は、もう一度池に石を投げて立ち上がった。
池に背を向けて歩き出す。
「相良さん…」
「ん?」
タバコを取り出して火を付ける。
「この先は…捜査して、いえ、知ってどうするんですか?」
「報告書には書けんけどな…それでも、人が消えているんだ、その事実は曲げられないさ、その原因が、同じ人なら尚更だ」
「敦くん…ですか」
「そうだな…桜井敦は、桜井家が押さえつけてきた過去、それが産んだ異端者なんだ、きっと…見て見ぬふりをしてきた桜護の異端」
「なんか可愛そうですね」
「本人がそう思ってないから異端なんだよ…花田巡査」
「そんなことないですよ」
「アイツはね、それを与えられた力だと思っている、行使して然るべき力」
「力ですか」
「あぁ、過去を知ったところで、アイツは何とも思わないさ、むしろ納得するだろうね、俺達より遥かに柔軟に受け入れるさ、そして更に、のめり込む」
「止めないとですね」
「止められるのかね~、うかつにアイツのテリトリーに踏み込むとコッチが消されかねない」
「そんな、私達だって色々、知っているんですよ」
「だからさ…なまじ知っているから危険なんだ、花田巡査…不用意に近づくなよ桜井敦には…」
「はい…」
タバコを足で踏み消して、再び歩き出す相良。
それを拾い、後を付いていく花田。
境内に手を付いて、しばらく眺める相良。
(いったい、何を追っているんだろう…アリス・シーカーの意識は、此処にあるのか?)
「神社ってのは神を祀る場所だったな…その神が異星人だったとはね…此処だけだと思いたいね」
「なにか言いましたか?」
「いや…昔の方が今より、宇宙に近いとは皮肉だなと思っただけ」
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