第50話 ハンド 

「なぜに火葬場なんです?」

「ん?アリスと同様に腐らない遺体がいくつかあっても、おかしくないと思うから」

「腐らないですか」

「そう…焼却できなかった遺体があったんじゃないかな」

「そんなバカな」

「うん、だから当たってよ…桜井崇の知り合いとか親戚とかで火葬場に務めている…あるいは病院に務めているとか…遺体に関われる知り合いをさ」

「桜井崇のですか…」

「あぁ、だから一番新しい突然死の遺体から遡ってくれる?案外、早いと思うんだけど」

「解りました」

「明日からでいいよ、今日はさ、このまま俺を送って、合鍵屋探してちょうだい」

「はい…って、あがるんですか?」

「うん…寒いんだ、天気悪いし…風呂入って寝るよ、あの民宿…風呂は家庭用なの」

「解りました、旅館に送ります…」


「切れ者なんだか…人をバカにして…」

 ブツブツと合鍵屋に向かう花田。

 目ぼしい所は、一通り当たってみたが、神社の鍵を作ったという合鍵屋は見つからない。

「検討違い?」

(どうってことない鍵だしな~注文したのが桜井敦って小学生じゃな~)

 車でコーヒーを飲みながら鍵を眺める花田。

「電話しよ」

 相良に電話してみる。

「あ、相良警部補?合鍵屋当たりましたけど…えっ?あっ…そうですね…それもそうですね…当たり直します」

(なるほど…)

 花田は検討違いをしていた。

 小学生が合鍵作るわけないだろ?桜井の名で注文した顧客履歴を当たれ。

「小学生が合鍵作りに来ませんでしたか?以前…」

 そんな聞き方してしまった。


 頭から当たり直して4件目でHITした。

『桜井智子』…桜井敦の母親だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る