第51話 12月29日(木)

(過去ではないはずだ…過去であれば、すでに澤田がいるということになる)

 そんなことはない。

 これから訪れる未来と考えるべきだ。

 つまり澤田は見つかるということだ。

 どうなるんだろう、未来に会うということは…何か月、何年か先に澤田は現れる。それまで彷徨い続けるのだろうか。

 時が繋がるまで…どのくらいの猶予があるんだ?

 明日かもしれないってことだ。

(冗談じゃない)

 ただの転移装置じゃないんだ、それは解っていた。

 人間には到底作れない反射率99.99999%の鏡、世界に散らばる鏡は時に繋がり、時に『分け身』を産む魔鏡、その1枚が天見神社に、入鏡池にある。

 遠い祖先が『分け身』を産んだ、その様子が絵巻で残っている。

 祖父が見た外人の『分け身』どこかで映された男の『分け身』を見たんだ。

 異国で埋葬された遺体、コピーされた抜け殻、きっと今も腐らぬまま、この地に埋葬されているはずだ。

 僕が持っているのはアリス本体の髪の毛。

『分け身』を産む直前に切り取った髪の毛。


 思うに偶然じゃない。

 祖先はきっとアリスの住む部屋の前の住人、祖先の遺品、あるいは血筋で祖父は祖先と繋がっていた。

 だから日記を残した、祖父にとっても必然だったのだ、あの池で起きる出来事は。


 父親にもあるのだろうか?

 血筋だとしたら可能性はある。そんな素振りすら見せないだけ。


 繋がりは解る、起きたことはすべて必然。

 必要なのは知識だけ。


 問題は…その知識を学ぶ相手がいないこと。

 アリスですら、自分の現状をしらないのだから…。

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