第80話 スーツ

「だからどうしたってこたぁないんだけどね」

 相良の部屋で、今まで解ったことをまとめている花田。

「なんでですか?大事なことじゃないですか」

「解ったことが少ないしさ…まとめるほどのことも解ってないし…俺、風呂入ってくるわ」

 相良がタバコをギュッと灰皿で揉み消して立ち上がる。

「この部屋禁煙ですよ」

「禁煙の部屋に灰皿が置いてある、悪意ある部屋なんだよ、俺はさ、悪意には悪意で返すことにしてるんだ」

「善意には善意で応えるんですか?」

「……感謝はするかな…ほどほどで帰ってね、俺、眠いんだ」

 タオルを持って、部屋を出ていく相良。

(絶対、湯船にタオルを浮かべる派だ…)


 確かに相良の言うことは正しい。

 並べてみると改めてそう思えざるえない。

 謎の物体地球へ飛来、異星人来訪、神格化、装置横取り、異星人交流断絶、桜井家装置独占?目的不明、記録は桜井敦所有?

(さっぱり要を得ない)

「やっぱ宇宙人ってのがよくない」


「まだやってるの?」

「はぁ…ダメですね…」

「宇宙人ってのがよくないんだよ」

「解ってますよー」

「うん、あのさ…宇宙人の定義ってさ、何?」

「そりゃ、他の惑星から来た知的生命体ですか」

「何しに来るの?」

「知りませんよ…なんかの調査とか?」

「先進国が未開の地に好奇心で入り込むようなもの」

「ですかね」

「視点を変えてみないか?」

「はい?」

「宇宙人の定義を狭めるとさ…地球人だって宇宙人だろ」

「言ってる意味が…」

「ん?だからさ、同じ地球人ならばってこと」

「ますます混乱してきましたけど…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る