第81話 リミテッド

「あの『魔鏡』と称されるナニカが、宇宙から飛来したのではなく、未来から…あるいは多次元から送り込まれたものだとしたらってことさ」

「はい?」

「まぁ、オカルトからSFに鞍替えするだけなんだけどさ、監察医が言ってたんだ時間軸がココにない…その方が宇宙人より、しっくりきてね」

 相良がタバコに火を付けて頭をカリカリと掻く。

 花田を顔を見ると、ポカーンと見返してくる。

「うん…つまりさ、同じ人間の所業だと過程するんだ」

「それでナニカ進展するんでしょうか?」

「しない…けど、同じ人間の思考なら読み取れることもあるかなっていうメンタルの問題かな」

「同じ人間…」

「そう、アリス・シーカーもオカルトやSFの出来事じゃない、現実にココに在る異質だ、桜井敦はさ…そこを理解しているんだよ、だからすんなり摂りこんでいける、それは過去の桜井家の連中とは違う点なんだ…少なくとも崇、久実は遠ざけた過去を敦は引き寄せたんだ、その違いは思考だよ」

「そうするとなにが変わるんですか今と?」

「宇宙人の思考を読むより…敦の思考を読むほうが容易い、俺達が追うのは宇宙人じゃない桜井敦だとね、ベクトルが迷走しなくて済むだろ」

「暗中模索は止める」

「そういうことさ、見るべきは現実、追うべきは桜井敦だと再認識したってことで…寝かせてくれないかな…俺、眠いんだよ…」

「丸め込まれた気もするんですが…」

「おためごかし…のつもりはないんだけどさ、でもオカルト雑誌の記者じゃないんだ俺達は、ただの警察官だよ…現実を見て、真実を見つけて、止められるものは早めに止めるんだ、それくらいしかできないんだからさ」

「はい」


 民宿を出た花田はグイッと寒空に背伸びした。

 白い吐く息に少しだけ胸のモヤモヤを吐き出せた気がした。

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