第64話 コールド
「すいませ~ん、警察の者なんですけどー」
火葬場という場所は陰気な場所だと思っていたが、綺麗な建物に室内庭園まであるホテルのような雰囲気に少し驚いた。
ホテルと違うのは、人気が無く、無機質で肌寒い、快適とは言い難い建物だという点だ。
(楽しい場所ではない…のだから…)
ロビーには誰もおらず、従業員の気配すら感じない。
予約が無ければ誰も居ないのだろうかと思うほどに人の気配を感じない。
ゴミひとつ落ちていない無機質な建物が不気味に思える。
ゾクッと寒気が走り、外に出ようと後ろを振り返ったとき、ロビーに女性が現れた。
無言でお辞儀をする中年の女性。
「何か御用ですか?」
薄い化粧をしている40歳代の細身の女性、とりわけ美人というわけでもなく特徴の無いというか印象に残らない質素なイメージが、無機質な建物にピタッとハマっている。
「あの、警察の者なんですけど…ちょっとお尋ねしたいことがありまして」
「なんでしょうか」
「えっと…なんというか…あの…」
花田は口籠ってしまった。
過去に変な遺体はありませんでしたか?燃えない死体とか?
そんな質問をしていいものかどうか…頭がおかしいと思われてしまう。
「その…ちょっと施設を見学させていただいてもいいですか?」
「はい?」
「あぁいやその…ちょっとした、あぁ!!こちらに桜井さんという方お勤めで無いでしょうか?」
「桜井…私が桜井ですが?なにか?」
「えっ?」
「桜井さん?」
「はい…なにか?」
「あの、御親戚に桜井敦くん、いらっしゃいますか?」
「敦…なら甥にあたりますが」
「あぁ、あぁそうでしたか」
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