第12話 12月20日(火)帰路にて

 ツマラナイ時間を過ごした。

 苛立って、少し足早になっていた。

 校門のところで澤田が待っていた。

「よう、今帰りか?」

「それ以外に何に見える?」

「機嫌悪ぃね~ヒーロー」

 無視して通り過ぎようとするとランドセルをグイッと掴まれた。

「待てよ!! いい気になるなよ!! 死体見つけたくらいで」

「死体見つけると、いい気になれるのか!! 機嫌が悪いんだ離せよ…さもないと」

「はぁ~?さもないとなんだよ!!」

 僕は、言いかけた言葉を飲みこんだ。

「なんでもない…離せよ」

 澤田がドンッと押し出すように手を放す。

 僕は澤田の方に振りかえることなく帰ろうとしたが、ピタッと足を止めて振り返った。

「いいこと教えてやるよ澤田、あの死体な…死体じゃないんだ、まだ生きてたんだよ」

「はぁ?なに言ってんのオマエ?」

「だから、まだ生きてるんだよ」

「なんだ?ゾンビだとでも言いたいのか?話題にならなくなったから嘘吐きだしたのか?」

「ウソ?信じなくてもいいけど…コレやるよ」

 僕は鞄から本に挟んである金色の髪の毛を1本澤田に差し出した。

「なんだよコレ?」

「あの死体の髪の毛さ」

 澤田の表情が強張った。

「コレがどうしたんだよ」

「それを雨の日、朝5時ちょうど、池に浮かべて名前を呼ぶんだ」

「名前?」

「アリス、あの死体の名前さ」

「アリス…で?どうなるんだ?」

「願い事でもしてみたら?」

「ハハハ…叶えてくれるとでも?」

「さぁね…僕は、有名になりたいって願ったけどね、じゃあな」


 そのまま僕は、家へ帰った。

(澤田は信じるだろうか?)


 どっちでもいいさ、アリスは死んでいなかった。

 即座に死体だと思った?

 少し違うね…目の前で死んだから死体だと言ったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る