第13話 ライン

「着きましたよ、相良警部補」

「ん~、神社なんて見当たらないけど?」

「少し歩くんです、小さな神社ですから…神主も定かでないような」

「歩くの?革靴だよ俺」

「雪国に出張するのに革靴はちょっと…」

「滑るよな~」

「まだ5センチ程度ですから大丈夫ですよ」

「あのね…雪国の5センチと都心の5センチは、50センチほどの開きがあるんだよ、感覚的にさ」

「こっちでは5センチ程度積もったとは言いません、歩いてください」


「しかも登りとはね…オワッと…」

 足を前に踏み出す度に滑って戻されているような気がする。


 登る事、15分、とても長い道のりに感じた。

 案外、積雪の感覚だけでなくて、移動距離にも10倍の感覚の差があるのかもしれない。

 都会の人の方が田舎の人より、よく歩くと思っていたが…田舎の人だって歩くじゃないか…。


「あ~なんだか趣があるというか…朽ち果てたというか…」

天見あまみ神社です、脇を抜けて奥にある大きな池が、入鏡いかがみ池」

「発見場所ってことだよね」

「そうです」

「池にしては広いよな~」

「円形ではないので、何なんですが、広い所で4mほどの幅があります」

「人工的な池だよね」

「そのようです、もともと池を作った後で神社が建てられたそうです」

「はぁ~古そうだね…」

「池そのものは平安時代からと聞いてます」

「平安…牛で石を退いたんだろうね~大変そう、なんでこんな小さな山に池を作ったんだろ?」

「さぁ?」

「しかも後付で神社までさ」

「さぁ?」

「で…このあたりから、あそこら辺に浮かんでた死体を見つけたと…」

「ですね」

「死んでることはすぐにわかった…か」

「なにか?」

「ん?遠すぎない?確認するにはさ」

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