第14話 12月20日(火)夜

 澤田はきっと池に行く。

 僕には確信があった。

 何を願うかは知らない、興味も無い。

 好きな子と付き合いたいとか、欲しいモノがあるとか、そんなことはどうでもいい。

 雨の日に、池に行けば澤田はいるはずなんだ絶対に。


 夕ご飯を食べて、お風呂に入り部屋で考えていた。

 澤田は、アリスの髪の毛を大事にしまったのだ。

 だから確実に試しに行く。

 冬休みに、また怪事件が起きてしまうが仕方ない…。

 今度は僕には関係ないし、静かな日常にも飽きてきたし。


 気まぐれに往復していたいんだ、静かに暮らしつつ、それに飽きたら、少しズレたゾクゾクする日常を紛れ込ませる。

 それが僕の理想の生活。


『アリス』

 永遠に迷う少女…いや女性だったな。

 アリスはウサギを見つけて穴に落ち、不思議の国へ導かれた。

 僕は、そのアリスの手を取って不思議の国へ行くのさ。

 もしかしたら、僕はアリスの見ている夢の住人なのかもしれない。

 アリスは僕の手をギュッと握ったんだ。

 冷たい手の感触が、いまだに残っている。


 ポケットの小さな十得ナイフでアリスの髪を一束切って持ち帰った。

 なぜ、そんなことをしたんだろう?

 記念品のつもりだったのかな。


 あるいは、解っていたのかもしれない。

 アリスのように彷徨い続け、時間から外れる方法を。


 昔話だと思っていた。

 祖父の遺品にあった神社の歴史を綴った絵巻物と、祖父の日記。


 もし、この2つが無ければ、ただの不可思議事件だった。


 これは幸運なんだろうか…いや、きっと必然だ。


 こうなる運命だったんだよ。


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