第144話 GAIN GROUND

「自殺だったんですよね」

「そうらしいね…」

「調べたんじゃないんですか?」

「……うん…まぁ…ね」

「やっぱり、そんな気がしてましたよ」

「聞きたいかい?」

 少し考えて、花田は

「いえ」

「そうか…それがいい。オマエさんは、まだ刑事として務めなにゃならん」

「辞めてもいい…そう思ってます」

「ダメだ、桜井敦に引っ張られてはダメだ」

「なぜです?相良さんだって」

「俺は、この件で定年だ…オマエさんは、警察官になってから今日まで、桜井敦に引っ張られてしまった…いや俺にと言った方がいいな、これ以上はダメだ」

「アタシは、自分の為に…」

「そうだ、だから数日のうちに決着は付く、オマエさんは結末を見届ける義務はある…けどそれだけだ…アイツと対峙するのは俺だ、それだけは譲れないな」

 ニヤッとわらった相良、シワが深くなった顔、だけど時折見せる眼光の鋭さは年老いてないように思えた。

 桜井敦だけを追ってきたせいか、的がブレないせいで研ぎ澄まされたような怖さがある。

 相良は後悔しているのだろうか…あのとき引き鉄を弾かなかったことを。

 ずっと迷ってきたような気がする、相良は自問自答を繰り返してきたのだろう…20年間ずっと…。


(今度は迷いなく弾きそうな気がする…そんな目をしている)

 花田は自分に向けられた相良の視線の意味を理解していた。


 オマエが見届けろ。


 それは相良の決意なのだろうか、20年間悩んで出した答えは、桜井敦を…。


「さて…行こうか」

「何処へ?」

「叔母さんのところだよ桜井敦の保護者のさ」

「居るんでしょうか?」

「さぁね~」

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