第145話 BORDER BREAK

 ファミレスを出て、車に乗る。

 パトカーではなくレンタカー、発進して後ろに目をやると、少し離れて付いてくる車が1台。

「しかし公安ってのは…どうして黒塗りフルスモークのセダンなんだろうね~」

「電気自動車はお気に入りみたいですけどね、彼ら」

「まぁ音が静かだからね…公安っぽいちゃあ、ぽいのかもね」

 タバコを咥える相良

「相良さん…」

「禁煙だったっけ」


 マンションの3階、郵便受けに名前はない。

「308です」

 花田が相良の前を歩く。

「どうして犯罪者ってのは隠れるのかな~」

 エレベーターで相良が呟く

「はぁ?犯罪者だからじゃないですか?」

「そうゆうもんかね~隠れるってさ見つけられることを拒むことだろ」

「そうですね」

「不思議だよな~目立つことしてさ隠れるって矛盾してないか?」

「桜井敦のこと言ってます?」

「ん、いや、アイツが隠れるとか考えにくいんだよ」

「今さらですか?」

「いや…いるとは思うよ…」


 308号室ドアの前で呼び鈴を押そうとする花田

「ここも表札はなしか…あっ、押さなくていいよ」

「はい?」

「そういうことです、ご苦労さまでした

 階段の角から先ほどから尾行してきた公安の刑事が姿を現す。

「えっ?どういうことですか」

「ん、どうもこうも…もともと、こういうシナリオなんだよ花田係長」

「ここからは…いや桜井敦の身柄は我々が預かる」

 花田の肩をグッと押し退けてドアの前に立つ公安の刑事。

「相良さん!!」

「無事に定年させてくれよ…花田係長」

「アナタは!!」


 公安の刑事が合鍵でドアの鍵を開けて中へ入る。

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