第29話 シュリンプ

 民宿に戻ると夕食が用意されていた。

(いつになったら喫煙できる部屋に変えてくれるんだろう…嫌われてるのかな?)

 茹でたエビを山菜で和えた海だか山だか解らない食べ物だ。

(もうちょっとピリッと辛いとビールに合いそうなんだけどな~)

 コンビニで買ったビールを飲みながら、花田が揃えた資料に目を通す。


 鬼を封じた鏡…鬼?

 その鏡を沈めた池だから入鏡いかがみね~。

 なんで鏡だったんだろ?

 退治はしてないんだな…封じたね~、倒せなかったってことだよな…。

 鬼…ねぇ~。

 龍とかじゃないんだ…人型ってことだよな。


 鏡を埋めた場所に水を張って池にしたと…。

 埋めるだけじゃダメだったんだろうな~たぶん。

 鏡を水に沈めると何かあるのかな?

 相良はスマホを取り出して花田に電話する。

 時刻は21時を回った頃、5度目のコールで花田が嫌そうに電話に出た。

「はい…」

「花田巡査、キミ手鏡持ってるよね?」

「持ってますけど…明日要るんでしょうか?」

「今、要るんだよ…キミお風呂入っちゃった?」

「これからですけど…それがなにか?」

「湯船浸かる派?」

「今日は浸かります!! 冷えたんで!!」

「ちょうどよかった、手鏡をさ、沈めてみてよ風呂に」

「はぁ?」

「頼んだよ、あがったら電話頂戴、俺もこれから風呂入るから」

「はぁ…電話するんですね」


 花田は洗面台の前で考えた…あの男は何を考えているのだろう。

 理科の実験感覚で捜査を進めているのだろうか?

「はぁ…お風呂はいろ…早く終わらせて寝よ」

 飾り気のないブラを外すと、凹凸の無い胸。

「はぁ~…」

 最近、ため息が多いなと思う。

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