第28話 モラル

「冷たい…寒い…」

「そろそろいいよ、拾ってみてよ」

「はい…」

「どう?なんか変?」

「べつに…グショグショでもう吸えないです…ざまあみろ」

 最後は小声で呟いた。

「グショグショか…こっちもだ…」

「あのー、もういいでしょうか?」

「いいよ…上がって」

 バシャバシャと足早に池の中を走る花田巡査。

 その様子を見ていた相良。

「楽しそうに見えるんだよな~不思議と…と言ったら怒るんだろうな~」

 相良にホイッとタバコを渡して足早で境内へ走る花田。

 相良が戻ると、境内でハンカチで足を拭いている花田がいた。

 小刻みに震えている花田。

「なにか解ったんですか?」

「ん?濡れたな~ってね…なんでだろ?」

「水に落とせば濡れるんですよ!!」

 ハンカチを搾りながら相良を睨む。

「そうなんだけどさ…濡れない事ってあるのかな~ってね…はいコレ」

 濡れてグシャグシャになったタバコを数本、花田の手に乗せる相良。

「捨てといて」

「はぁ?」

「キミ…マナーにウルサイんじゃないの?」

「モラリストのつもりですから!!」


「コンビニ寄ってよ、コーヒー飲もうよ」

 相良が右側のコンビニを指さす。

 外でタバコを灰皿に捨てて待っていると相良がレジで手招きしている。

「なんですか?」

 相良が真剣な顔をしている。

 あの時と同じ目。

「なんでしょうか?相良警部補…」

「花田巡査…千円貸してくれない?」

「はい?」

「いや…コーヒー奢るから…千円貸して」

 しぶしぶ財布から千円を差し出す。

「いいから飲んでよ遠慮せずにさ」

「はい」

(私の奢りじゃないよね…コレ)

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