第27話 マナー

「どうして池にモノを捨てるんです」

「捨ててないよ、拾ってる。むしろ回収する方がメインなんだ」

「拾うくらいならなぜ捨てるんです?」

「だからさ、捨ててないんだよ…拾うんだから、考えてごらんよ、捨てなきゃ拾えないじゃないか」

(この男と話していると、どうにも神経を逆なでされる様な不快感を感じる)

 花田の感じている、その不快感は、あからさまに表情に現れている。

「花田巡査、キミが何を考えているかは解っている、言いたくはないし、命令は好きじゃないんだが…捜査権は誰にあるんだ?」

 相良の目が鋭くなって、不愉快さを宿す花田の目を威圧する。

「相良警部補です…」

 思わず目を逸らして、相良の手からタバコを受け取る。

「あのさ~遺体が発見された場所あたりに落としてみてよ」

 相良の声のトーンはいつもの空気の抜けたトーンに戻っていた。

(なにか調べようとはしているんだ…きっと…たぶん…)

「あの~、池の中に入らないとならないんですけどー」

「そうだよ、だからキミに頼むんじゃないか、俺はホラッ、革靴しか持ってきてないんだ」

 相良が片足を軽く持ち上げて、靴を指さす。

「私だってブーツなんですけど」

「池…深くはないんだろ?」


 花田はブーツとストッキングを脱いでスカートをめくりながら池に入っていった。

(嫌いだ…あのヒト…大嫌いだ…)

「このあたりでいいですかー」

「あぁ…そのあたりでいいよ、タバコを落としてさ、1分くらい様子を見て拾ってみてよ」

「はい…解りました…解りませんけど…」

 最後は聞こえない様に呟いた。

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