第147話 Hot Rod
「花田!! 救急車」
一瞬、桜井敦を追おうとした相良が一呼吸おいて叫んだ。
「はい」
花田の横をスッと横切る相良、うつ伏せに倒れている公安、その後ろで包丁を持ったまま突っ立っている桜井久美に手錠を掛ける。
「そんなに…桜井家が大切だったのか?」
「敦は…桜井の…私にはなれないから…私が、もし私だったら、兄さんは自分で放棄した…私には、選ぶ権利すら与えられないんだって…誰よりも、誰よりも私が桜井のために尽くしてきたのに…すべては敦のためだったんだ…」
花田が救急車と一緒に呼んだ警察官に桜井久美を引き渡し、公安の男は救急車で運ばれて行った。
「パトカーの方が早かったですね…」
「そんなもんだよ、世の中ってヤツはさ…人命より護るべきものが在るって解っているんだ、みんな」
「桜井久美も…ですか」
「あぁ、嫌いだった敦を囲ってたのも、桜井いや桜護としてのナニカなんだろうね」
「それがナニカ解らないのにですか?」
「あぁ、中途半端に知って、勝手に妄想したのかもね、崇高な家柄だとでも思いこんだ…」
「思い込まなければならなかったんだと思います。腐らない遺体の処理なんて、普通じゃちょっと…」
「久美は敦に桜護のナニカを視ていたのかね~」
「どうするんですか?」
「なにが?」
「事情聴取受けなきゃですよ」
「そうだね…でも早いと思うよ、相手は公安だよ、サラッと形式上で終わるさ」
「そうなんでしょうか?」
「それが証拠に、未だに出頭命令すら来ないじゃないか、今頃さ、上意下達の模範文書が流れているはずだよ…滞りなくさ、とりあえずココでタバコ吸ってりゃ迎えが来るさ…ほらっ」
相良が指さす方向、黒いセダンがマンションの下に停車した。
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