第32話 12月25日(日)2
まずいな…電話でもして、誰かに見られたり知られたりしたら意味が無いとでも釘を刺したいところだけど…接触は避けたい。
だが、アリスの髪の毛を持っている…鑑定されたら事だ。
しかもアイツは、僕がアリスが死んでいなかったと話したことをバラしかねない。
(もうすぐ…4時か…澤田のバカが動き出す)
窓の外では、みぞれが雨に変わりつつある。
(最悪だ…)
朝の5時に、あの刑事が入鏡池なんかに、いるわけがない…そうは思うのだが、なんだか嫌な予感がする。
その場で鉢合わせしなくても…あの刑事は、澤田から僕へ、何かを辿って来そうな気がする。
あるいは澤田以外からでも…。
あの刑事の目が頭から離れない。
あの目は、狩る側の目だ。
(この僕に向けられていい目ではない)
まずは…澤田だ…魔鏡に取りこまれれば、もう、この世界には戻れない…抜け殻になれ…。
結局、僕は澤田を止めることはしなかった。
止めたほうが厄介になるかもしれない…そう考え直した。
予定通り…この世界から消えろ、澤田。
(その瞬間だけは見たかったし…できれば僕の手で…でも、それは別のヤツにするよ…そうあの刑事とか…ね)
「フッ…フハハハ…アハハハハハハ」
そっちのほうが面白そうだ。
「敦、起きてるの?」
母親が階段の下から僕に話しかける。
「うん、なんだか早く目が覚めちゃって」
階段をトントンと上がってくる足音がする。
(来なくていいのに…)
部屋のドアが開いて、母親が部屋に入ってくる。
(入るなよ)
「敦、おはよう…また寝付けないの?」
「ううん、少し早く目が覚めただけだよ…大丈夫」
「そう…母さん心配で…あんなことがあってから…心配で」
僕の顔に冷たい手が触れる。
不快な感触…。
アリスの手も冷たかった、白くて美しい手だった…。
(早く死んでくれないかな…この人も…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます