第65話 セメタリー

「施設の案内でしたら、今日は誰も居りませんので私が案内いたします」

「お願いします」

「なにかの捜査ですか?」

「えぇ…まぁ」

 不明瞭な返事を返してヘラッと笑う花田。

 無機質な建物を案内されながら歩く、遺族の移動順と遺体の移動順を一通り歩いて応接室でお茶を出された。

「こんな感じでよろしかったですか?」

「はい、もう」

「お伺いしてもよろしいですか?」

「なんでしょう」

「施設のことでいらしたんですか?」

「……は…い…」

「私を訪ねていらしたようでしたので…それでしたらいいのですが…」

「実は…ですね、桜井さんに伺いたいことがありまして」

「はい…なんでしょう」

「単刀直入に伺います」

 花田は大きく息を吸い込んでハァーッと吐き出した。

「ここに、お務めしてどのくらいか解りませんが、変なことありませんか?」

「ここには務めて18年ほどになります。まぁ場所が場所ですから…変なことは無いこともないですが…警察の方にお話しすることはありません」

 ひとくち、お茶を飲んで花田を見てニコッと笑った。

「あぁ…お名前伺ってませんでしたね」

「桜井久実くみと申します、崇は兄です」

「なるほど…先ほど、警察にお話しすることはないとおっしゃいましたが」

「えぇ…いわゆるオカルト的な話はありますし、聞きますが。その程度のことです」

「あぁ…その…伺い難いんですけど…」

「いいですよ」

「燃えない遺体なんてあったりしますか?」

「……」

 久実は少し目を逸らして、しばらく窓の外を見ていた。

「昔…そんな話を聞いたことはあります」

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