第21話 ウェット

「湿ってもいない…」

 タバコを目の前で眺める相良。

「なに言ってるんですか?」

「いや…なんでもない」

 相良は上着のポケットからハンカチを出してタバコを包んで、またポケットに戻した。

「あのさ…誰が決めるんだろうね、いいとか悪いとか」

「総意ってヤツじゃないですか?」

「誰の?」

「民衆の」

「俺も民衆のつもりなんだけどな~」

「マイノリティってヤツですよ」

「少数派?」

「そうです、今や喫煙者は少数派なんです、税金ガンガン上げて徴収したらいいんです」

「多数決が民主的なのかね~、それとさ花田巡査」

「なんです?」

「間違ってるよ」

「なにがです?」

「税金ガンガン上げて徴収すればってトコ」

「なんでですか?おかしいですか?」

「あぁ…ソレ、タバコを吸えって言ってることにならない?」

「………」

「ね、矛盾してるよ…オタクの発言さ」

「相良警部補って、友達少ないでしょ?」

「多くは無いね…でもそんなもんだろ大半の中年なんてさ、あっ、ソコだけは俺もマジョリティってことだね」

「ソコはマイノリティでいいと思うんですよ…多い方がいいと思いません?」

「別に…不自由はないけどな~」

「その考え方はマイノリティです…」


「さぁて~現場も見たし…帰ろうかな、ホテルにさ」

「送ります」

「お願い」


「あのさ~、ホテルじゃないんだね…」

「旅館です…ホテル少なくて空き部屋がありませんでした」

「旅館?…俺の認識では、こういうの民宿って言うんだよね」

「それは…マジョリティ?」

「だと思うけどな~」

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