第102話 1月3日(火)深夜
父の遺体が池で見つかった。
自殺であるらしい。
葬式は3日後、喪主は母が務める。
(手間が省けた…)
本音を言えば、少し惜しい気もする、どうせ池に入ってくれるならば、ひと声かけてほしかった。
まだまだ知りたいことは沢山あるのだから。
気になるのは、遺体を残したことだ、おそらくは腐らない遺体を…僕への当て付けか、それともあの刑事へのメッセージか。
贖罪とは考え難い、そんな崇高な精神があの男に宿っているわけがない。
桜護の精神は、僕にこそ繋がり、受け継がれているのだから…その経過に過ぎない父なる存在など通過点以外の何者でもない。
遺産は、僕の手で護られ、僕のために動く、それだけでいい。
別にソレで何かを変えようとも思わない。
僕にとって都合のいい街であればそれでいい。
僕の世界は、この街だけでいい。
「アリス…」
なぜ繋がらない…アリス…アリス…。
「敦」
ハッ…暗闇の包まれたまどろみの中で、なぜあの男の声が?
「ウッ…」
眩暈と吐き気に襲われ、僕はトイレへ駆け込んだ。
洗面台で口をすすいで、部屋に戻る。
居間から、母親のすすり泣きが聞こえ、僕は苛立ちを感じた。
(まさか…あの男、アリスに取って代わったのか?)
部屋は1人しか入れないと言っていた…惹き込む以外にも追い出すことも出来たのか?
盲点だったかもしれない。
猫のような小動物が留まる事は出来ても、意思を持つ管理者は1人だけのはず…いや管理者の解任を考えれば外部からの交代も可能だと考えるべきだったんだ。
(クソッ!!)
あの男は、内部から僕にコンタクトを取るために管理者になったんだ…。
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